2015 Fiscal Year Research-status Report
近代ドイツにおける宗教思想と「読者としての大衆」の関係についての研究
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26370071
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
深井 智朗 金城学院大学, 人間科学部, 教授 (40306379)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大衆 / 編集者 / 思想史 / ヴァイマール期 / ヴィルヘルム期 / 出版史 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミュンヘンの出版社C・H・ベックの調査を行った。またドイツ・出版協会が毎年開催するフランクフルトでの見本市に際して授与される平和賞について、特にパウル・ティリヒの受賞に際しての議事録を入手し、それをもとに平和賞と受賞者の政治的立場、また社会的評価、メディアや大衆との関係について考察した。 前者については1763年から2013年までのC・H・ベック社の社史を書いたシュテファン・レヴェンリヒの研究を参考にし、社史資料室の協力を得て、特に20世紀以後、宗教関係の書物の出版にあたって、教会などの既存の宗教団体と、アンケート調査などによって得た一般大衆の意見とをどのように取り扱い、出版活動に反映させてきたかを分析した。資料室に残るさまざまな時代の読者からの応答の書簡や著者から提供された反響の分析は貴重な資料となった。 後者については、ティリヒの平和賞受賞について、理事会がどのように対応したかを知る上で貴重な資料となった。それは戦中のティリヒの政治的立場をめぐるもので、著者自身が提示した、あるいは自己演出した政治的立場と、実際の政治的行動との差異に注目することになったが、著者が自らの学問を著作を通して提示する際に、どのような大衆に対するイメージ化を試みているかを実証するよいサンプルとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究ではC・H・ベック社の協力のみならず、800頁を超える社史を刊行したシュテファン・レヴェンリヒの協力を得られたことにより、資料の収集、分析がスムーズになった。特にベック社が保存していた著者と読者をつなぐさまざまな資料を入手できたことは、本研究の主題である宗教思想と「読者としての大衆」の関係を分析する手がかりとなった。 他方でクリスティアン・カイザー社の関係資料の収集、分析は予定していた程度にしか進展しなかった。その理由はクリスティアン・カイザー社の資料が部分的に研究者に貸し出されており、その部分について夏の出張時に確認できなかったことにある。 次年度の研究にそれは追加し、処理したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究では、昨年終えることができなかったクリスティアン・カイザー社の資料収集と分析を終え、最終的にC・H・ベック社、オイゲン・ディーデリヒス社、クリスティアン・カイザー社の読者との関係、著者と読者との関係などについての資料の分析と、そこに見出される出版社、編集者の思想、あるいは神学を抽出する作業に入る。 最終的にはこれらを論文化し、収集した資料のデーターベース化を行い、研究を公にする。
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Research Products
(6 results)