2015 Fiscal Year Research-status Report
G・ボッテーロのマキアヴェッリ批判と16世紀南欧国家理性論の形成
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26370078
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
石黒 盛久 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (50311030)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ボッテーロ / 国家理性論 / 16世紀 / イタリア / マキアヴェッリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題遂行の基礎的作業として2015年12月にジョバンニ・ボッテーロ著『国家理性論』全巻の翻訳を風行社より刊行し、現在その思想内容の詳細な分析を、16世紀後半イタリアにおける国家理性論の展開を背景として進めている。 また本研究を側面から推進する事業として関西大学法学研究所並びに早稲田大学現代政治経済研究所の協賛を得て、フィレンツェ大学文哲学部教授Daniela Coli氏を招聘し、両大学において16世紀後半から17世紀初頭にかけての欧州国家主権思想の展開を主題とする研究セミナーを開催した。 更にマキアヴェッリからボッテーロへの思想史的展開にも言及する形で、昨年11月に開催された第40回社会思想史学会大会小シンポジウム「制度の政治思想史」において、パネラーとして発言を行っている。 こうした考察の成果を踏まえ、ボッテーロの著作に示される〈国家理性〉(ragion di stato)概念の内容と意義を、彼以前のマキアヴェツリにおける〈統治の技法〉(arte dello stato)と、彼以後の〈国家主権〉論との対比を媒介に、本年8月に開催予定の早稲田大学ヨーロッパ中世・ルネサンス研究所の研究集会の報告において報告の予定である。 加えて本年12月、フィレンツェの大学コンソーシアムInternational Studies Instituteで実施予定の、同機関と金沢大学の日伊文化交流小シンポジウムにて、明治以降の我が国における〈国家理性〉概念の展開史につき講演予定であるが、本公演の成果を通じてマキアヴェッリからボッテーロに至る16世紀イタリア政治思想を研究する、現代日本的意義についても洞察を深めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中軸をなすボッテーロ『国家理性論』の翻訳・注解作業が予定通り完了している。本年こうした作業の完遂に加え、関連する諸研究の参看なども踏まえて、ボッテーロの思想をマキアヴェツリ以降の〈国家理性〉理念展開の展望中に位置づける作業も、8月の研究集会での発表に向け順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り現在ボッテーロの〈国家理性〉理念を、マキアヴェツリ思想の16世紀イタリアにおける政治思想展開の展望中に位置づける作業を進行させているが、ボッテーロ政治思想の個別各論的部分の考察が不十分である。ボッテーロ政治思想の全貌を把握し、これについて総括的著述を成し遂げるためには、この欠を補う研究(その経済論・軍事論・宗教論等々)を行うことが不可欠である。加えて彼の思想の特質を側面から浮かび上がらせるため、16世紀イタリア政治思想の終着点とも称されるツッコロの思想を痛感しておくことも不可欠と考えられる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は974円とほぼ無視できる金額であり、全体として予定通りの支出が行われているものと考える。謝金を計上したにもかかわらず、支出ゼロとなっているが、これは招聘講演者の好意により、謝金ゼロにより招待講演が可能となったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述の如く次年度使用金額はほぼ無視できる程度であり、当初計画通りの支出を実行すればよいものと考える。
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Research Products
(8 results)