2015 Fiscal Year Research-status Report
カトリック宗教改革期におけるローマの宗教曲の資料研究
Project/Area Number |
26370113
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Research Institution | Musashino Academia Musicae |
Principal Investigator |
長岡 英 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 講師 (00723793)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ルネサンス音楽 / ジョヴァンニ・アニムッチャ / ミサ曲 / カトリック宗教改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、カトリック宗教改革(反宗教改革)期にローマ教皇庁ジューリア礼拝堂楽長を務めたジョヴァンニ・アニムッチャ(c.1520-71)の宗教曲研究を通じて、この時期のローマの典礼音楽の実像を示し、トリエント公会議の音楽への影響を解明することを全体構想としている。従来、ラウダ作曲家として捉えられることが多かったアニムッチャであるが、彼が1567年にローマで出版したミサ曲集第1巻は、1563年に終了したトリエント公会議の規範に沿って作曲されたと考えられ、非常に重要である。当時、教皇庁で実際に歌われていたと考えられるミサ曲の実像と、その受容状況を明らかにすることと、それを広く周知させるために現代譜として出版することを目的とするものである。 平成27年度は、現存する16世紀に出版された楽譜資料の調査を2回行った。8月の第1回調査旅行では、大英図書館、ロンドン大学セナート・ハウス図書館、フィレンツェ国立図書館、ボローニャ国際音楽博物館図書館で、アニムッチャのミサ曲集第1巻を中心に、翌年に出版された彼のマニフィカト集や同時代にローマで活躍したパレストリーナのミサ曲集を調査した。また、2月の第2回調査旅行では、ローマのヴァティカン図書館、カザナテンセ図書館、サンタ・チェチリア音楽院図書館、ローマ国立中央図書館、そしてパリ国立図書館で、同様の楽譜資料を調査した。中でも、教皇庁の資料を収めるヴァティカン図書館では、所蔵されたアニムッチャの印刷楽譜5冊と、パレストリーナの印刷楽譜4冊、さらにアニムッチャのミサ曲が筆写された手写本を精査することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロンドン、フィレンツェ、ボローニャ、ローマ、パリの図書館で資料研究を行った。重要な資料が多数残されているローマでは、歌詞が訂正されたり、声部が追加されたりしたものなど、興味深い資料が複数見つかった。 2017年3月に東京で開催される国際音楽学学会のフリーペーパー部門にプロポーザルを提出した。
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Strategy for Future Research Activity |
ジョヴァンニ・アニムッチャのミサ曲集の現代譜を出版するために、引き続き、本研究の主眼であるヨーロッパでの資料研究を行う。28年度は、ドイツやベルギーなどを中心に印刷楽譜や写本を調査し、詳細に分析する。 成果を発表するため、11月に名古屋で行われる日本音楽学会全国大会の研究発表に応募する。また、27年度に応募したプロポーザルが受理された国際音楽学学会(2017年3月)でも発表する。
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Causes of Carryover |
27年度収支状況の報告書を提出した後に27年度2回目の調査旅行を実施したため、その経費を含めることができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度2月にローマで資料研究を行った(旅費他)。 28年度夏と春に、ドイツやイタリアなどで資料研究を行う(旅費他)。 学会発表や出版プロポーザルのために資料を集め、執筆する(物品費など)。
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Research Products
(1 results)