2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370127
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
染谷 香理 東京藝術大学, 美術研究科, 助手 (90572579)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 技法材料 / 日本画 / 技法書 / 模写 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに収集・整理を行ってきた元禄期から近代までの日本画の技法書のうち、時代や体裁、執筆者の立場が異なる4篇の技法書をを選出し、それらを収録した「技法書データベースβ版」(http://hiden.geidai.ac.jp)として一般公開を行った。研究者や作家がデータベースの閲覧・利用を自由に行えるようにしたとともに、利用者が使用感などのアンケートで回答できるようにした。このデータベースは、日本画の技法書を必要に応じて翻刻したり現代仮名遣いに修正したりした上でテキスト入力を行い、画材や技法ごとに記載内容を整理・分類して収録した「カテゴリー検索」と、それら技法書をそのまま検索できる「全文検索」を可能にしたもので、これにより、これまでに技法書を紐解く上で課題となっていた次の事例を解決すことができた。1.著者自身が用語や材料を取り違えて解説している場合、正しく検索することができない。2.宛て字の使用や複数の漢字がある場合などは(緑青を六緑、臙脂と燕脂、など)正しく検索することができない。3.同じ材料を示していても、時代により言葉が変化してしまっている場合(胡粉や鉛白)正しく検索することができない。4.書簡や随筆など技法材料以外の記述が多く、章立てなどがされていない文献の場合、該当箇所を探し出すまでに時間を要する。 またデータベースの作成と平行して、これまでに収集した日本画の技法書の解題集を作成を進めており、とくに本年度は元禄期から幕末までの技法書に絞って、東京藝術大学大学図書館・東北大学大学図書館狩野文庫・九州大学大学図書館相見文庫・東京都立中央図書館加賀文庫・国立国会図書館古典籍資料室等に趣き、原本調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
技法書データベースについては当初の予定通りβ版の公開を開始することができた。データベースにはこれまで一般的に着目されてきた材料の解説だけではなく、その材料を扱う所作や著者(作家)の感想・心得なども積極的に収録を行った。そのため研究の目的である、実際に絵を描く画家にしかわからない経験や勘といったものにも光を当てることができた。 また技法書の解題集の作成については、特に冊子の場合、すでに翻刻されている本文を読み解くだけではなく、同じ文献でもいくつかの原本を調査する必要があるため、予定よりも時間を要している。そのため、技法書のデータベースに収録するための文献の分類や整理については若干の遅れがあり次年度以降の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
データベースについては新たに収集した文献の翻刻及びテキスト入力を進めるとともに、引き続き収録文献数を増やすために、技法書の分類や整理を進め、本年度中に新たに20篇ほど追加を目標としている。またこれまで収集・調査した文献のうち、元禄期から幕末までのものを解題集を作成し、前編として完成させる予定である。
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Causes of Carryover |
当初、データベースの構築に経費がかかることが予測されており、人件費を計上したが、作成済みであったデータベースβ版の移行が順調に進んだため、計画よりも人件費を削減できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
収録する文献の整理とその入力作業に遅れが見られるため、人材をより多く雇用し、またパソコンなどを新たに購入するなどして計画通り作業を進められるようにする予定である。
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Research Products
(3 results)