2014 Fiscal Year Research-status Report
18世紀前半オランダ絵画コレクションの受容史的研究:「オランダ性」をめぐる考察
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26370136
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
青野 純子 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (20620462)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オランダ絵画 / 風俗画 / 17世紀 / 18世紀 / 受容史 / コレクション / 絵画市場 / 画商 |
Outline of Annual Research Achievements |
【概要】 本研究では、18世紀前半のコレクションにおける17世紀オランダ絵画の受容を考察の対象とし、コレクターの絵画購入・評価・鑑賞という蒐集活動がいかにその受容の過程と関わり、オランダ絵画の「オランダ性」の形成に寄与したのかを分析する。そこで平成26年度は、オランダにおいてプロジェクト推進の基礎となる調査(2014年9/11-9/23; 2015年3/4-3/12)を実施した。すなわち国立美術史研究所(ハーグ)、国立美術館図書館(アムステルダム)等において、18世紀オランダのコレクションに関する文献・資料の収集を行い、ケーススタディである17世紀農民画に関しては、オランダの美術館において作品調査を、国立美術史研究所の写真アーカイブにて写真・文献資料収集を行った。また、アムステルダム大学、デルフト大学、国立美術史研究所等に所属する多数の研究者とプロジェクトのテーマについて議論する機会を得たのも有益であった。 【出版物・発表等】 ケーススタディのひとつである17世紀農民画家アドリアン・ファン・オスターデの作品の18世紀における受容評価をめぐり、競売目録等を用いて調査を進めた。その結果、農民画の人気を高めようとする18世紀パリの画商の戦略の一部が明らかになり、その成果を論文として『ヨーロッパ研究』に発表した。 平成26年度前半には、17世紀末-18世紀初頭オランダ絵画の研究史の分析を行い、論文を執筆、来年度にはそれを収録した論文集(英語)が刊行の予定である。また2015年3月には、18世紀オランダ風俗画とその17世紀絵画受容をテーマとした単著(英語)を出版し、アムステルダム大学にて18世紀オランダのコレクションと17世紀絵画受容に関する出版ミニ・シンポジウムを主催し、18世紀オランダ風俗画に関する講演(蘭語)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本およびオランダでの基礎資料・文献の収集、作品調査の実施、また17-18世紀オランダ絵画に関する一次文献・二次文献の購読においては、ほぼ予定通りに進んでいる。研究成果の発信としては18世紀オランダ絵画に関する論文・著作を執筆・刊行することができ、ミニ・シンポジウムを始めオランダ美術史研究者との対話からは様々な示唆を得ることができた。 ケーススタディA「コレクターの好む絵画ジャンルの考察」に関しては、予定よりも早く農民画の調査が進み、研究の成果の一部を論文としてまとめることができた。 ケーススタディB「コレクターの評価する画家に関する考察」の調査も進めているが、そのなかで、ケーススタディAと内容的に不可分に結びつく興味深い事例・作例が多いことが判明し、AとBを総合的に調査する可能性が出てきた。例えば国際的な絵画市場におけるオランダ絵画の評価を分析するならば、特定の画家の評価・人気は彼が得意とする「絵画ジャンル」や題材の評価と緊密に結びついている例が多く見られるのであり、今後はこうした点を考慮して研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降も研究の目的、方向性と研究方法に変更はない。ただし、本報告書の「現在までの達成度」のなかで述べたように、ケーススタディのAとBの研究対象に関しては、総合的にとらえ調査を進めていく可能性が生じており、日々の調査研究の成果に基づきながら、適宜、調査対象を適切に選択していく予定である。また、今年度の研究成果、とりわけ『ヨーロッパ研究』の論文において、フランスの画商の戦略とオランダ絵画評価の密接な関連について考察したが、ケーススタディAとBを効率的に進め成果を得るためにも、今後も国際的な絵画市場と画商の役割にについてさらに検討をすすめていく予定である。 具体的には、平成27年度においても17-18世紀オランダ絵画とコレクションに関わる一次文献・二次文献を読み進め分析するとともに、ヨーロッパでの資料・作品調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
日本、オランダにおける研究調査を進める過程で、写真資料の購入費、その資料整理のためのパソコンおよびその周辺機器の購入費、また古文書資料調査補佐のための謝金等が必要と考えられたため、使用額を定めた。が、平成26年度においてケーススタディの農民画の研究の一部が予定よりも早く進み、成果を論文として発表することになり、この際の調査には競売目録など文献資料の収集が主となったため、上記のような写真資料・古文書資料の調査の一部を平成27年度にも行うことととなった。そのため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、写真資料および古文書資料調査を進めるなかで、写真・古文書資料の購入費、調査の進度によって必要となった文献等の購入費、古文書調査・整理の補佐や英語論文の校閲のための謝金、資料整理のためのパソコンおよび周辺機器を購入費などに、使用する予定である。
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