2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370143
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Research Institution | Yamanashi Eiwa College |
Principal Investigator |
李 尚珍 山梨英和大学, 人間文化学部, 准教授 (00515348)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 朝鮮美術展覧会 / 郷土性 / 工芸 / 在朝鮮日本人 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度の研究実績として本研究の大きなテーマである「朝鮮美術展覧会」の創設背景とその影響について考察し、西洋の概念としての「美術」が日本による植民統治期の朝鮮社会と美術界にどのような影響を与えてきたのかを分析する作業が進んだ。そして、2015年度には前年度の研究実績を踏まえて、朝鮮美術展覧会における「郷土性」とその議論に関する分析を進めることができた。 1910年代に朝鮮で暮らし始めた浅川伯教・巧兄弟と白樺派として活動していた柳宗悦との出会いによって朝鮮美術・工芸を研究対象とする活動が活発になり、1920年代からは日本と朝鮮に「工芸ブーム」が巻き起こった。彼らの活動は朝鮮美術展覧会の作風と審査員の審査基準に影響を与え、美術における「郷土性」表現が強く意識されるようになった。 近代化の中に固執されている伝統文化・習慣の表現であるのか、近代化を受け入れたありのままの現状の表現であるのか、その議論は朝鮮人作家、日本人作家、日本人審査員によって対立しているようにみえるが、伝統の「継承」を表象として確立していこうとする意志は共通している。このように朝鮮人作家、日本人作家、日本人審査員の言説を分析することによって、「郷土性」表現の真相とその意義を今後の研究において幅広く考察することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
朝鮮美術展覧会の朝鮮人作家と日本人作家の作風を分析しながら、その表現における「郷土性」が過去・後進性を表す前近代的なものであるのか、あるいは現在・先進性を表す近代的なものであるのかについて考察することができた。それは、明確に分かれるものではなく「継承」というキーワードで過去と現在をつなぐものであった。 今年度に特別企画展覧会「日韓近代美術家のまなざし-『朝鮮』で描く」が全国6ヶ所巡回展(神奈川県立近代美術館等)をし、多くの朝鮮美術展覧会の出品作品を公開したので、その作品を観覧し、配色などにも注目し、作風を分析することができた。さらに各担当学芸員のインタービュから得た情報を通して、当時の朝鮮美術展覧会の様子をより明確に考察することができた。このような分析内容を学会で発表しながら、より客観的な考察ができるようにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
『朝鮮美術展覧会図録』と展覧会関連の論説・新聞記事などの一次資料の分析をより精密に進めながら、審査員や作家の個々の経歴に注目し、それが朝鮮美術展覧会と「工芸部」新設と「郷土色」議論にどのように影響を与えたのかについて考察していく。
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Research Products
(4 results)