2014 Fiscal Year Research-status Report
法隆寺・東大寺宝物に見られる「イラン文化」:エフタルとソグドの影響について
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26370146
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
影山 悦子 関西大学, アジア文化研究センター, 非常勤研究員 (20453144)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中央アジア / イラン / ソグド / 唐 / 正倉院 / 法隆寺 / 刀剣 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である平成26年度は、法隆寺および東大寺正倉院の宝物の中から、西アジア・中央アジアで製作された可能性のある資料と、両地域の影響が認められる資料を抽出した。また、西アジア・中央アジア・中国で発見された図像資料や出土資料から、法隆寺・東大寺宝物と比較可能な資料を収集した。 図像資料の収集と平行して、宝物の中の刀剣について研究を行った。鞘の2ヵ所に足金物を備える大刀が伝わるが、このように鞘に2つの金具を取り付けて、長さの違う2本の紐で腰のベルトから吊るす方式は、西方から中国・日本に伝わった方式であるとされてきた。本研究では、中央アジアの図像資料を検証することにより、この方式は、エフタルが中央アジアを支配した時期に、短剣をベルトから下げて携帯する習慣とともに同地域の定住民の間に普及したことを明らかにした。6世紀半ばには中国に伝わり、唐代には長剣を佩く標準的な方法として定着し、それが日本に伝わった可能性が高いことを示した。 従来の研究によって法隆寺・正倉院宝物に西方の影響が認められることが明らかにされているが、その源はササン朝ペルシアにあると考えられてきた。しかし、鞘の2ヵ所にとりつけた足金物によって剣を佩く方法は、ササン朝ペルシアから中央アジア経由で東方に伝わったのではなく、エフタル支配下の中央アジアにおいて流行した方法が東方に伝わったと考えられる。法隆寺・東大寺宝物にはササン朝ペルシアだけでなく中央アジアを起源とする影響が認められることを具体的に示すことができた点に、本研究の意義があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、本研究の基本となる図像資料の収集を行った。法隆寺・東大寺宝物の中から関係する資料の抽出作業を行ったが、その過程で、西方の影響が明白な資料を新たに発見することができた。 本年度は、宝物の中で、とくに刀剣に注目し、佩刀方法についての研究を行った。8月に中国の銀川において、11月にはイスタンブールにおいて開催されたソグド人に関する国際学会に参加し、研究成果の報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、法隆寺・東大寺に伝わる酔胡王と酔胡従の伎楽面を取り上げる。酔胡王と酔胡従は「深目高鼻」の胡人を表わし、酔胡王は頂部が平らな帽子をかぶる。近年、中国北部で、ソグド人聚落を管理する「薩保」という官職にあったソグド人の墓が発見されている。葬具に表現された墓主は酔胡王と同じ形の帽子をかぶっている。このことから、酔胡王の面は「薩保」をモデルにして中国において製作されたものが、のちに形式化し、日本に伝わったと考えられる。 伎楽面に対しては、製作方法や材料を解明するための自然科学的な調査も行われている。また、最近になって、欧米の博物館が所蔵する伎楽面についての調査報告が発表されている。このような研究も参照して、酔胡王の図像の起源について研究を進めたい。 また連携研究者とともにウズベキスタンの博物館を訪れ、本研究に関係する遺物の調査を行う。 平成28年度は、収集した図像資料を最大限活用して、法隆寺・正倉院宝物に認められる西アジア・中央アジアの影響について考察する。中央アジアや中国で新たに発見された資料と比較することにより、それがササン朝ペルシアに由来するものなのか、エフタルまたはソグドに由来するものなのかを考察し、日本に伝わった唐の「イラン・モード」の起源を再検討する。 研究の過程で、連携研究者に助言を求める。また国内外において研究成果を発表する予定である。
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Causes of Carryover |
自身の論文を複写し、研究者に郵送するために複写費と通信費を計上していたが、実際には論文を収録する書籍を購入し、学会などで直接手渡したので、これらの費用がかからなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、物品費で、海外調査で使用するためのデジタルカメラと、東西交渉史、西アジア・中央アジア美術史、正倉院宝物に関連する書籍を購入する。海外調査と研究発表を行うために旅費を使用する。海外調査は、夏にウズベキスタンにおいて連携研究者とともに行うことを予定している。研究発表は秋に北海道大学で開催される学会で行う予定である。北海道で開催されるため、予定していたよりも交通費がかかるが、不足分は次年度使用額で補う。その他の費用は、英文校正費、通信費として使用する計画である。
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Research Products
(4 results)