2014 Fiscal Year Research-status Report
出土資料を中心とした曜変天目・油滴天目に関する研究
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26370151
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Research Institution | 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術 |
Principal Investigator |
小林 仁 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、, その他部局等, 研究員 (00373522)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 天目 / 曜変 / 油滴 / 陶磁史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、南宋の都のあった杭州で出土した曜変天目及び各種出土天目資料の調査(熟覧、実測、撮影など)を行い、当時宮廷に献上された曜変天目をはじめとした天目資料の全体像の把握とその特質についての理解に努めた。具体的には、杭州市考古研究所や杭州博物館などの考古発掘による出土資料の調査を行うとともに、曜変天目をはじめ民間に所蔵される資料の調査も併せて実施し、南宋宮廷に献上された、あるいは南宋の都にもたらされた天目の実態を理解する上で多くの知見が得られた。とくに、初めての出土例となる曜変天目の破片は、詳細な記録(サイズ・重さなど)や撮影を行うとともに、ポータブル型デジタルスコープによる顕微構造の撮影を試験的に行い、曜変天目の斑紋の拡大画像を初めて確認することができた。 また、曜変・油滴の科学分析を通したその制作技法、メカニズムの解明については、研究協力者の陶芸家から分析方法などについての様々な助言をもらいながら検討を進めた。さらに、所属機関である大阪市立東洋陶磁美術館所蔵の国宝「油滴天目」(建窯)や重要文化財「木葉天目」(吉州窯)、さらに杭州出土とされる南宋建窯産天目の覆輪などについて、黒川古文化研究所の研究員の協力を得て蛍光X線を用いた非破壊分析を実施し、天目の覆輪の材質を初めて科学的に明らかにすることができた(小林仁「天目の覆輪について」大阪市立東洋陶磁美術館編『特別展「黄金時代の茶道具―17世紀の唐物」図録』大阪市立東洋陶磁美術館、2015年3月、94-99頁/小林仁「重要文化財「木葉天目」に関する新知見」『陶説』第745号、2015年5月、17-25頁)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
杭州出土の曜変天目については、所蔵者との良好な関係のもと計画的に学術調査や顕微構造の撮影などを進めることができている。また、杭州出土のその他の天目資料についても予想以上の興味深い資料を確認することができており、これまで主として日本の伝世品や文献などからしか分からなかった南宋の曜変・油滴をはじめとした天目について、南宋の都(宮廷)の出土品から、新たな考察を行うことが可能であることを改めて確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
出土資料の調査、撮影については順調に進んでいるので、引き続き新たな資料を含めて更なる調査を進めていきたい。曜変天目の顕微構造の撮影を試験的に行うことができたが、今後はより精度の高い機器で曜変や油滴の顕微構造の撮影を行いたい。また、分析については、これまであまり注目されなかった覆輪という天目と不可分な要素に注目し、その材質解明に初めて科学的な分析を行い大きな成果を得た。曜変・油滴天目の科学分析を通した制作技法の解明については、現在研究協力者の陶芸家からも助言を得ながら、効果的な分析方法について検討をしているところである。
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Causes of Carryover |
予定していた図書資料購入がなくなったことなどによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の旅費あるいは物品費の補助として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)