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2015 Fiscal Year Research-status Report

材質からみた日本彫刻史研究―素材選択の背景の探求と木彫像の年輪年代調査による―

Research Project

Project/Area Number 26370154
Research Institution公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術

Principal Investigator

児島 大輔  公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、, その他部局等, 研究員 (50582376)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2018-03-31
Keywords仏教美術 / 彫刻史 / 年輪年代 / 木彫像 / 材質
Outline of Annual Research Achievements

本年度も年輪年代調査など作品の素材に注目した調査研究を継続しておこなっている。
国有・木造二天王立像は同じく国有の木造阿弥陀如来坐像および東京・根津美術館所蔵の木造地蔵菩薩立像とともに仏師快助工房によって久安三年(1147)頃に造像された可能性が指摘されている。この二天像の年輪年代調査をおこなったところ、両像から得られた年輪変動パターンはきわめて酷似し、両像に用いられた材が同一の原木から木取りされた可能性の高いことが知られた。また、開口するその2像の最外年輪の形成年が1125年であることが明らかとなったほか、本像には虫蝕痕跡帯が観察され、これを辺材と解釈できるならば本像用材の伐採年代は1125年以降、数十年の幅におさまることとなり、上記の久安三年造像説とも齟齬をきたさないばかりか、木材の伐採から造像までの時間差を考えるうえでもきわめて貴重な調査結果を得ることとなった。このような年輪年代と制作年代の懸隔・差異については引き続き検討しなければならない大きな課題である。
これまでの美術工芸品に対する年輪年代調査は制作年代を知るすべがないような作例に応用されるケースが多かったが、在銘作品等の制作年代が明らかな作品の年輪年代調査は制作過程や木材利用のあり方を知る上で重要である。今後は制作年代が明らかな作例をも調査対象として積極的に年輪年代調査をおこなう必要がある。
こうした観点から、滋賀・横山神社懸仏群は貴重な作例である。紀年銘によってその制作年代については異論のないところだが、紀年銘を持つ9面を含む全60点に対して悉皆的に年輪年代調査をおこなうことによって、鏡板材の年代と制作年代との懸隔を検討し木材利用のありかたの一端を明らかにする好個の資料となり得る。今年度はその事前調査をおこなったが、幸いに同神社からも懸仏群の調査の許可を得ており、次年度以降に調査を進めたい。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究は貴重な文化財を調査研究の対象とするため、どの調査も所蔵者や所蔵機関のご高配を得ることではじめて成り立つ。所蔵者・所蔵機関の都合如何によっては調査等を計画通りに進められないケースもままあるが、連絡調整を継続しておこなうことで良好な信頼関係を築き、予定する調査を所定の研究期間内に遂行できるよう努力している。
本年度も、当初予定していた調査のうちの何件かは展覧会への出陳等の都合により、今年度の調査を断念せざるを得なかったが、いずれも今後の調査の協力に対しては快諾を得ており、引き続き調査の実現に向けて調整をはかりたい。
また、調査成果の公表についても個別の報告書、論文、学会発表といった様々な媒体を通じて社会への還元を図っており、本年度もわずかながら成果を公表することができた。今後も引き続き成果の公表に努めたいが、研究成果のとりまとめや調査結果の公表までに時間を要し年度をまたぐこともある。研究期間内に効率よく成果を社会に還元できるよう計画的に研究を遂行していきたい。

Strategy for Future Research Activity

今後も引き続き研究計画に基づいて本研究課題の遂行にあたりたい。具体的には、紀年銘と様式論によって導き出された制作年代と鏡板の年輪年代の差異の確認とその解釈によって制作過程と木材利用のあり方を明らかにすることを目的として本年度予備調査をおこなった滋賀・横山神社の鏡像群の調査についてはすでに同神社より本調査の許可を得ており、来年度中に調査をおこないたい。また、継続して進めている奈良・東大寺金銅八角燈籠の制作技法の解明等に関する調査研究については随時その成果を報告していきたい。
さらに、2017年度には研究代表者の所属機関である大阪市立美術館において木彫仏像の展覧会を開催することで研究の成果を公表し広く社会に還元したい。2016年度はこの展覧会の準備についてもあわせて進める必要がある。本研究課題の申請時には研究代表者の所属機関が異なっていたため、展覧会の開催といったかたちでの成果発表を考えていなかったが、調査研究と共にその成果の公表の方策についても検討を重ね、より良いかたちで広く社会に還元したいと考えている。

Causes of Carryover

本調査を来年度以降に実施することになるなど、本年度予定していた調査をおこなわなかったため、あるいは購入を予定していた年輪幅計測ソフトの購入を見送る等のために次年度使用額が生じているが、これについては次年度に調査をおこなう予定や購入の目途が立っており、全体の研究計画から鑑みても問題がないものと認識している。引き続き規定に基づき適正な使用を心掛けたい。

Expenditure Plan for Carryover Budget

本年度購入にいたらなかった年輪幅計測ソフトの購入を検討しているほか、調査のための出張旅費を見込んでおり、現在具体的な調査日程等の調整中である。いずれも全体の研究期間・研究計画を鑑みて全く問題なく来年度以降に使用できるものと考えており、引き続き計画的かつ適正に使用することを心掛けたい。

  • Research Products

    (2 results)

All 2015

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 木造二天王立像(国〈文化庁保管〉)の年輪年代調査2015

    • Author(s)
      星野安治、児島大輔、光谷拓実
    • Journal Title

      MUSEUM

      Volume: 657 Pages: 41-43

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 東大寺金銅八角燈籠の火袋枠の平面度3D計測データ2015

    • Author(s)
      三船温尚、児島大輔、八坂寿史、三宮千佳
    • Organizer
      アジア鋳造技術史学会
    • Place of Presentation
      中部大学
    • Year and Date
      2015-07-31

URL: 

Published: 2017-01-06  

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