2016 Fiscal Year Annual Research Report
On the Visual Rhetoric of Trompe-l'oeil and the Perspective Box in the 17th-Century Netherlands
Project/Area Number |
26370168
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
柿田 秀樹 獨協大学, 外国語学部, 教授 (10306483)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遠近法箱 / サミュエル・ファン・ホーホストラーテン / 視覚レトリック / 騙し絵 / 視覚文化 / 投影 / アナモルフォーズ / 潜在的なもの |
Outline of Annual Research Achievements |
本年、現地調査はイギリスとオランダで行った。ロンドンではナショナル・ギャラリーとポートレート・ギャラリーを、ディラムではホーホストラーテンの絵画が飾られたウィリアム・ブラスウェイトの17世紀邸宅を訪れた。オランダ・ハーグにおいてはRKDを訪問し、ホーホストラーテンを中心に騙し絵画家の調査をした。ナショナル・ギャラリーにてホーホストラーテンが制作した遠近法箱を撮影し、『エドワード6世』等のアナモルフォーズ画の史料収集をした。ジェイムズ2世時代にハーグに派遣されていたブラスウェイトの邸宅においては、17世紀のオランダとイギリスとの文化的関係が確認された。これらにより、遠近法箱での実際の視覚経験を解析し、騙し絵と当該作品の美術史の背景について理解を深めた。現地調査で集めた映像資料をPCでデータベース化している。 現地調査と並行して、視覚文化と潜在性に関する文献をレトリック論の観点から読み進めた。その結果として明らかになったのは、1.これまでの視覚(文化)論では、視覚の歪みを網膜の歪みとして感覚的に経験させる視覚構造に基づき遠近法の批判がされること、2.しかしこの歪曲構造は、眼から入って網膜に映った光線を視覚経験とする分析である限り、生理的な経験と歪みを自然とするレンズの空間認識の指摘に留まり、3.したがって、この視覚文化の考察では、自明となった視覚経験で工学的な無意識が果たす役割を十分に考慮することが難しく、視覚の自明性への批判が困難になっていることが指摘できる。代わって、視覚そのものがヴァーチャルに生成される無意識の身体経験とする視点を採用することで、遠近法箱の観察に伴う視覚の違和感と身体的補正の運動を投影構造とする視座を射程に捉えるレトリカルな議論の手がかりを得た。この研究は、「遠近法箱の視覚レトリック」という論文として、『<見える>を問い直す』所収の形で刊行が決まっている。
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Research Products
(3 results)