2016 Fiscal Year Annual Research Report
Pain and Communality in Contemporary Performance Art
Project/Area Number |
26370172
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
外岡 尚美 青山学院大学, 文学部, 教授 (10227605)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | パフォーマンス・アート / 身体 / 苦痛 / 情動 / 共同性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、身体の現存とスペクタクル化および観客の関与を課題として、マリーナ・アブラモヴィッチとボブ・フラナガンの作品について検討すると同時に、身体とメディアの接合による知覚の変容を課題に、ステラークを検討した。またこれらのアーティストの作品および関連アーティストの作品について未見の映像資料および文献を、さらにフラナガンとの関連で、障がいを戦略的にアート化するアーロン・ウィリアムソンとキャサリン・アラニエロ作品の映像資料を含めて、ロンドンのBritish LibraryおよびLive Art Development Agencyにて調査した。 文献に関しては、昨年度に引き続き情動と苦痛および共同性に関して読み進めた。2015年度までの研究成果において、苦痛が唯物的に喚起する情動には、観客の感情に裏打ちされる定型的反応や解釈枠・共同体性を切断する可能性があると論じてきた。2016年度は情動の喚起する暴力に焦点を合わせ、暴力とマゾヒズムと共同体との関係を検討した。アブラモヴィッチの『リズム零』を中心に「情動と暴力」について、そしてフラナガンの病とマゾヒズムについて、成果発表のための準備を進めている。情動的体験が商業的な演劇も含めて演劇体験として広がりつつあることを概観した「〈体験〉への希求――体験型演劇とサード・レイル・プロジェクツ」は、2017年3月刊行の『国際演劇年鑑2017』に掲載された。 パフォーマンス・アートにおける身体的苦痛が喚起する、共感覚としての情動の両義性を本研究では分析したが、今後展開する次の課題は、ステラークを始めとしたパフォーマンス・アートにおける身体的知覚の変容と生成の問題について理論的に体系化することである。
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Research Products
(1 results)