2015 Fiscal Year Research-status Report
電子メディア時代の文芸創作およびメディア環境についての基礎研究および実験
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26370181
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
市川 真人 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (60708361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辛島 デイヴイツド 早稲田大学, 国際教養学術院, 講師 (40736005)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電子書籍 / 近未来メディア / 読書 / 文芸 / 批評 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】 紙から電子へと書籍メディアが移行するにあたって、紙上のテキストであることを前提としてきた文芸創作およびそのメディア、そしてそれらへの批評が、どのように変化するかについて予測と実証によって検討する。 【研究方法】 電子書籍が普及開始した2010年度以降の日本国内の電子書籍ジャンル(文芸作品)について、昨年度の調査で、当初は多様に存在した電子書籍の開発計画とフォーマットが、この数年のうちに急速に国際的な統一企画に絞られてゆきつつあることを確認した。一方、独自規格は、ゲームや動画コンテンツも含めた総合アプリケーションとの境界をまたぎつつあったため、2015年度はリーディング・サービスも含めた「読者」側のありかたや、活字時代の文字コンテンツを(共通化しシンプル化してゆきつつあるフォーマットの中で)どう拡張してゆくかの試みを、継続しての調査と、ソーシャル・リーディング・システムの試作・開発・試用などによって実験を開始した。 【研究成果】 具体的には、20世紀の日本を代表する小説家・中上健次作品を、その作品の舞台となった空間(和歌山県新宮市)との連動で読むアプリケーションをその内容とともに試作、8月上旬に現地でテストユーザーによるロケ実験を行なった。(協力・株式会社サイフォン)。また、研究代表者が担当する大学のゼミナール(メディアと批評)での教材用に、ソーシリル・リーディング・アプリを試作、サンプルとなるテキストのとりこみなどを行い、2016年度からの試用実験に備えた。海外状況については、共同研究者の他研究とのかねあいで、十分なサンプルを集めることができなかったため、2015年度に継続して情報収集を行なう予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電子書籍の状況変化にともなう、研究の主な方向性の修正(サンプリングとデータベース化から、新たな読書体験と創作・批評のためのアプリケーション試作と実証実験にもとづく将来像の予測)に伴う遅れはありつつも、2015年度は2つのアプリケーションの試作を行なうことができるなど、順調な進展をみた。ただし、研究代表者の家庭の事情(新生児の病気看護と介護プランの必要)の発生から、計画の遂行にやや支障をきたしているため、総体としてはやや遅れをみている。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、開発中のアプリケーションふたつの実験の進行と、さらに1~2のアプリケーションの試作・実験をもとに、「電子書籍時代の読書と創作・批評」について、報告をまとめてゆく予定である。ただし上記事情により、進捗にやや不透明な部分があるのも事実で、夏をメドにロードマップの修正・再構築の可能性がある。
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Causes of Carryover |
前年度の収支状況報告書に記載のとおり、電子書籍をめぐる状況への変化から、「電子書籍時代の文芸創作およびメディア環境について」の本課題の主たるウェイトを、記載した「基礎研究および実験」のうち「実験」に移した。そのため、使途および支出順に計画との変更が生じ、2015年度もその調整が継続していたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに2つの事例で開始している実証研究を進めつつ、今年度さらにいくつかの実験を行うことで調整してゆく予定である。
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