2014 Fiscal Year Research-status Report
「赤いヴィーン」における音楽政策とモダニズムとの関係
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26370188
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Research Institution | Osaka College of Music |
Principal Investigator |
西村 理 大阪音楽大学, 音楽学部, 准教授 (00552738)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 音楽政策 / ラジオ放送 / シューベルト没後100年 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究開始年度である本年度は、オーストリア社会民主党の音楽政策に関する資料の収集と読解を重点的に行った。研究計画書の通り、先行研究を参照しながら、オーストリア社会民主党発行の新聞や雑誌における音楽政策に関する記事を整理し、収集と読解を行った。その成果と今後の研究の展開を以下に列挙する。
1、ラジオ放送での音楽番組の可能性に関する議論およびオーストリア社会民主党の主導による「労働者交響楽演奏会」が放送されていた。研究実施計画の段階では、ウィーンでは1924年10月からRAVAGによって開始されたラジオ放送が、オーストリア社会民主党の音楽政策に関係しているか明らかではなかった。しかし、今回の調査によってマスメディアであるラジオ放送が同党の音楽政策を実施していく上で、重要な役割を担っていた可能性が高いと考えらることが分かった。そのため放送局が出版していたラジオ雑誌に掲載されている番組表から音楽番組を整理することに着手した。 2、「赤いヴィーン」の時期には、1927年のベートーヴェン没後100年と1928年のシューベルト没後100年というウィーンで活躍した大作曲家の記念年があった。オーストリア社会民主党はモダニズム音楽と並んで、ウィーンを代表するこの2人の作曲家についても重要視していたため、音楽政策におけるモダニズム音楽とこの2人の作曲家の位置関係についても注目し、資料収集を行った。1928年には、オーストリア社会民主党が与党とするウィーン市と、キリスト教社会党を与党とするオーストリア連邦政府がそれぞれシューベルト祭を開催し、また第10回ドイツ合唱同盟祭がウィーンでシューベルト没後100年を盛大に祝ったので、三者のプログラムと意図の比較を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
夏に資料調査を行う予定であったが、右足骨折のため冬に延長した。その結果、資料の読解に時間が十分に取れなくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究達成状況を踏まえ、2年目は以下の方策で行う予定である。
1、初年度に引き続き、オーストリア社会民主党発行の新聞や雑誌における音楽政策に関する記事の収集と読解。 2、オーストリア社会民主党の音楽政策を実施していく上で、RAVAGが果たした役割が大きかったとことが分かったため、当初の研究計画を変更し、RAVAGについての研究を行う。具体的には先行研究の調査とラジオ雑誌から音楽番組を整理する。 3、初年度の引き続き1928年のシューベルト没後100年の調査に加えて、1924年のシェーンベルクの生誕50年にも焦点をあて、オーストリア社会民主党以外の機関が発行していた新聞や雑誌での関連記事も調査していく。
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Causes of Carryover |
夏に長期滞在し資料調査を行う予定であったが、右足骨折のため冬に延長したため次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の夏にウィーンで長期滞在し、資料調査のための旅費として使用する予定である。
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