2014 Fiscal Year Research-status Report
音楽表現の新たな素材としてのヒューマンビートボックスに関する基礎研究
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26370193
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Research Institution | Sapporp International Junior College |
Principal Investigator |
河本 洋一 札幌国際大学短期大学部, 幼児教育保育学科, 教授 (50389649)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒューマンビートボックス / 音楽表現 / 模倣音 |
Outline of Annual Research Achievements |
実施計画で掲げた事例収集のうち、(社)日本ヒューマンビートボックス協会の協力により、台湾でのヒューマンビートボクサーの聞き取り調査を実施することができた。調査対象としたのは、台湾ビートボックスチャンピオンシップ5年連続チャンピオンのJimix氏と、台湾ビートボックス協会会長のAMic氏である。 Jimix氏は、POPダンスを習っていたもののヒューマンビートボックスは独学で習得した。その背景には、近年急速に広まった動画投稿サイトの存在があり、これなくしてはヒューマンビートボックスの流布はあり得ないと言えるほど、その存在価値は大きい。互いにヒューマンビートボックスの技術を披露しながら、技術向上を図っている。それは単なる物真似の域ではなく、ヒューマンビートボックスという一つのジャンル、一つの音楽表現法としての地位を確立していると言える。 また、台湾では、ヒューマンビートボックスの指導の際に、当然のことながら、漢字を使用する。その中国語(漢字)の「音(おん)」が持つ響きのうち、ヒューマンビートボックスの指導に適したものを採用することで、「b,t,p,t」のようにアルファベットを使った指導と同様の効果が期待され、初心者に対して簡易な指導法として活用できることが、Jimix氏への聞き取りで明らかとなった。さらに、中国語を使った指導の特徴としては、漢字はそれ自体に意味があるので、アルファベットを使用した指導法とは異なり、意味のある言葉に乗せて指導をすることで、初心者が覚えやすいという効果があることが確認された。(例:「b,t,k,t」 → 「不吃可吃」(食べられる、食べられないの意) ) なお、国内の事例調査は平成27年度の4月から5月の間に調査を延期した。また、収集した音源を分類する模倣音レファレンスも未完成のため、平成27年度の研究で早期に実現させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に計画した調査の内、国外の調査は計画通りに終了し、今後もインターネットを介した継続調査が可能な関係が構築された。また、日本国内の事例集については、実施することができなかったものの、すでに具体的な計画は作成されており、平成27年度に入ってからすぐに調査に取りかかる段取りができている。 また、映像や音声を処理するためのハードウエアの整備もほぼ完了しており、残るは、模倣音レファレンスの構築となっている。 なお、模倣音レファレンスは、ホルンボステルとザックスによる楽器分類に依拠するが、そもそもヒューマンビートボックスでは、模倣音だけではないオリジナルの音も数多く存在することから、模倣音レファレンスという概念ではなく、音そのものを物理的な指標で客観的に捉える方法の確立が必要となることが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、未実施の国内調査を直ぐに実施する。これと並行して模倣音レファレンスという概念の妥当性について、検討する必要がある。これは、ヒューマンビートボックスが単なる楽器の模倣という域から越え、オリジナルの音を使った独自の音楽表現を確立していることに由来する。何らかの楽器をイメージした演奏の場合は、模倣音レファレンスという概念で対応できるが、ビートボックスバトルになると、この概念では対応できなくなる可能性がある。 また、ヒューマンビートボックスは、その背景に高速インターネット網と動画投稿サイトの存在が欠かせないことが、これまでの調査の中で明らかとなりつつある。この時代の進歩と共に発展してきたヒューマンビートボックスの歴史的背景を明らかにすることも、本研究が音楽の教科書などへの掲載も視野に入れていることから、必要な研究内容の一つである。 今後は、国内での指導事例の収集、ヒューマンビートボックスの音源の分類法、歴史的背景の調査の三つを大きな柱として研究を進めていく。
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Research Products
(1 results)