2015 Fiscal Year Research-status Report
音楽表現の新たな素材としてのヒューマンビートボックスに関する基礎研究
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26370193
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Research Institution | Sapporp International Junior College |
Principal Investigator |
河本 洋一 札幌国際大学短期大学部, 幼児教育保育学科, 教授 (50389649)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒューマンビートボックス / 直接的模倣 / 音楽表現 / 素材 / 大衆芸術 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画通り、国内外の演奏者の演奏事例の収集を目的に、ベルリンで開催された「BEATBOX BATTLE WORLD CHAMPIONSHIP」の日本選手団に同行し、世界的な表現の事例を収集することができた。この世界大会は3年に1度開催される世界的に権威のある大会であり、世界中からその国を代表する演奏家が集まり、様々な演奏表現を披露し競い合う大会である。本研究では、この大会に参加する日本選手団に同行し、彼らの演奏表現だけでなく、世界的なレベルにある演奏家の様子を映像記録することができた。 また、日本を代表するヒューマンビートボクサーのアーカイブズの作成にも着手した。この映像記録は制作途中である。 一方、ヒューマンビートボックスの試験的分析に関しては、「模倣音レファレンス」による分類を試行したが、このレファレンスは、そもそも音楽学における楽器の分類(ホルンボステル、ザックス)に着想した分類法であったため、口を使った表現であるヒューマンビートボックスの分類としては対応しきれない部分があることがわかった。 そこで、研究方針を改め、音声学における「調音部位」の分類を援用することとしたところ、発音部位による分類法としては有効であることが示唆された。ただし、ヒューマンビートボックスは、指導過程で便宜上言語音を使用することはあっても、目指している音は言語音ではないため、発音記号のように記号化することが困難な音が多数存在する。したがって、調音部位を援用した分類に関しては、ヒューマンビートボックスの特徴を客観的に示すことができる合理的な分類法の確立が急務である。 また、ヒューマンビートボックスの音響分析に関しては、上記に示した分類法が確立してから実施することとした。これについては、次年度の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の一つである、ヒューマンビートボックスのアーカイブズの制作に関しては、順調に進展している。具体的には、日本を代表する10名のビートボクサーの映像取材がすでに完了しており、今後編集作業に移る予定である。 ただし、ただ単にビートボクサーの映像を記録するだけでは学術的価値に乏しいため、本研究では、作音技法や表現技法を整理した上でのアーカイブズ化を目指している。また、音楽表現としての新たな素材としての一般化を試みるための基礎資料となることも想定しているため、映像記録を基にした合理的な分類法の確立が急務である。
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Strategy for Future Research Activity |
撮影が終わっていないビートボクサーの映像撮影を実施すると共に、合理的な分類法によるヒューマンビートボックスの作音技法と表現技法の分類作業が再優先課題である。これについては、昨年度、「調音部位」の援用による分類の有効性が示唆されたため、さらにこの分類法をブラッシュアップし、様々な表現の分類に対応できる分類法の考案を試みる。 また、ヒューマンビートボックスを音楽表現の新たな素材として一般化するための客観的な説明をおこなうために、学習指導要領などと対照した上で、音楽教育の対象としての利点について示していきたい。 さらに、具体的な指導例を収集し、効果的な指導方法や教材化の可否について、最終年度へ向けて検討していく。
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Research Products
(3 results)