2014 Fiscal Year Research-status Report
日本演劇と国際舞台 マダム花子一座を中心とした海外巡業劇団の総合研究
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26370197
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
根岸 理子 東京大学, 教養学部, 特任研究員 (80322436)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ジャポニスム / シアトリカリティー / 女優 / 芸 / オリエンタリズム / 日本人論 / 日本論 |
Outline of Annual Research Achievements |
海外の人々が「日本演劇」を目にする機会がほとんどなかった20世紀初頭、20年近くにわたって西欧諸国の舞台に立ち「日本演劇」の魅力を伝え、彫刻家オーギュスト・ロダンの唯一の日本人モデルともなった日本女優「マダム花子」一座の調査を進めた。 平成26年度は、当初の計画どおりアメリカでの調査をおこなった。9月12日~9月21日まで、ニューヨーク公共図書館(The New York Public Library)およびニューヨーク公共図書館の専門図書館パフォーミングアーツ図書館(The New York Public Library for the Performing Arts)において調査をおこない、花子関係の資料を収集し、「アメリカのマダム花子-ニューヨーク公共図書館所蔵資料に拠る一考察―」というタイトルで『Kyoritsu Review』第43号において、これまでその実態がはっきりしていなかった1907年と1909年のマダム花子一座のアメリカ公演の模様を紹介した。 また、1月3日~1月11日まで、大英図書館(The British Library)において調査をおこない、マダム花子一座が本拠地としていた英国においての劇評を入手することができた。英国は花子がその女優としてのキャリアの最後を飾り、のち、「湖月」という本格日本料理店をオープンした国でもあるので、引き続き調査し、特にその最後の舞台の模様を今後明らかにしていきたい。 3月12日~3月15日には、花子ゆかりの地である(彼女が余生を過ごした)岐阜県(岐阜県図書館)において調査をおこない、岐阜の新聞が(存命時も含めて)かなり花子のことを取り上げていることが分かった。今後も調査を続け、日本での花子評価についても分析をおこなう予定である。恐らく、海外の研究者にとって最も得がたい情報となるのは、この部分であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に計画していたアメリカ(ニューヨーク公共図書館およびニューヨーク公共図書館専門図書館パフォーミングアーツ図書館)においてのマダム花子一座関連資料の収集・調査を終え、結果を論文の形で発表することができたため。不明な部分の多かった、マダム花子一座のアメリカ公演の模様の一端を明らかにすることができた事は、成果であるといえる。 また、英国(大英図書館)および日本(岐阜県図書館)においても調査を進め、新たな資料を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
マダム花子一座が2度にわたり大規模なツアーをおこなったイタリアでの調査を実施する。調査先としては、一座に関する資料が現存していることが確かであるイタリア最大の図書館・フィレンツェ国立中央図書館に赴き、劇評やプログラム、ポスター等の収集・分析を試みたい。 また、26年度に引き続き、花子の経歴および日本での評価についての調査を進めることとする。具体的には、花子が海外に出るまでの詳細な経緯と、1902年の渡欧から1921年の日本帰国までに日本の新聞に取り上げられた花子関連の記事を集め、分析することを試みる。これらの日本側の資料、特に新聞・雑誌に関しては、主として国立国会図書館や東京大学の明治新聞雑誌文庫、岐阜県図書館で収集する。 上記の調査による成果は、申請者が所属している研究会や学会において適宜発表する。
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Causes of Carryover |
海外および日本国内での資料収集・調査が不可欠の当研究であるが、勤務一年目という事もあり業務と重なり、出張期間を思うように確保することが難しかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究では、旅費が大きな割合を占める。勤務二年目という事で、出張可能な時期や期間が分かっているので、海外(本年度はイタリアを計画している。可能であれば英国で補足調査をおこないたい)および日本国内(マダム花子の出身地である愛知県や、彼女が晩年を過ごした岐阜県)においての調査費として使用する。また、花子が国際舞台で活躍することができた時代背景を知るために、日本演劇の紹介が企画されながらも、その実現を見なかった1910年の日英博覧会関連の文献を購入したい(日本の図書館では所蔵しているところがほとんどないため。)
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Research Products
(1 results)