2017 Fiscal Year Annual Research Report
Natsume Soseki's Reception of Great Britain: Constructing a Theory of Literature
Project/Area Number |
26370263
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
野網 摩利子 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (60586668)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 夏目漱石 / 西洋思想 / 文学理論 / 身体性 / 東洋文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
夏目漱石の文学、および、漱石による文学理論が、西洋思想、とりわけウィリアム・ジェイムズならびにアンリ・ベルクソンに匹敵する、人間の身体に起因する精神、あるいは、身体性を伴わないことにより異常を来す精神状況について捕捉したうえで提示されていたことを説明できた。その要点を、連載論文「思想との交信―漱石文学のありか」【上】【下】で端的に論証している。 そのことにより、漱石自身の考え方に基づいた小説理論構築を可能とした。この理論のほうは科学研究費助成事業(国際共同研究加速基金(国際共同研究強化))により、英国、米国、ブルガリア、日本のメンバーで、文学が伝播され、創作を刺激するしくみについて解明する共著を準備中である。国際シンポジウムを2017年6月に国文学研究資料館にて主催し、各メンバーは互いに、文学をめぐる具体論について踏み込んだ議論を交わした。さらに、その理論調整を2018年2・3月に、英国ロンドン大学およびオックスフォード大学で行った。 本研究は、漱石が欧米の文化・思想面から人間の根幹に踏み込む視野を獲得したことで、日本および中国文学を見直す転回を遂げ、若いころのそれらの読書体験とはまた異なった、いかに意識的に小説家としての利用を試みたかという論点も保持する。この観点からの考察は「漱石文学の生成―『木屑録』から『行人』へ」および「古譚と『草枕』」(平成30年5月)で行っている。 本研究成果により、漱石が西洋思想に対する深い理解に基づく理論的認識を持ち得ていたがゆえに、人間の身体と精神とを同時に造型してゆく文学を、いっそう人間の自然に近いかたちで創造することができたのだと明らかになった。
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Research Products
(9 results)
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[Book] 漢文脈の漱石2018
Author(s)
野網摩利子、山口直孝、齋藤希史他
Total Pages
207
Publisher
翰林書房
ISBN
978-4-87737-425-9
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