2016 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of the Rise of Elizabethan Drama with Special Reference to the Boy Companies and Court Culture
Project/Area Number |
26370269
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐野 隆弥 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90196296)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | John Lyly / Midas / マープレリト論争 / セント・ポール少年劇団 / William Cecil / Elizabeth I / 主教システム(episcopacy) / 商業演劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、英国初期近代政治・宗教関係研究書、およびJohn Lylyを中心としたエリザベス朝の劇作品・散文資料を収集し、Lyly後期喜劇の分析と少年劇団の活動状況を調査し、学会発表と論文執筆をそれぞれ1件ずつ行った。 Lylyのキャリアにおいて、Cecil家およびその親族とのコネクションが重要な役割を演じているが、この両者の直接的な関係と考えられる事象が再び浮上するのが、1588年のマープレリト論争前後の時期であった。本研究では、Lylyの後半期の活動―特に、Midas(1589-90)―を分析対象とし、該当時期におけるLylyの政治的振る舞いを解析し、その際のセント・ポール少年劇団の機能についても可能な限り検証した。 その結果、マープレリト論争とMidas の作劇が同期していたこと、並びにMidasにおいてLylyが、大胆な、挑戦的とも言える劇作術を試みることで、女王に対する一層の訴求効果を狙っていたことを明らかにした。同時に、この大胆な劇作術が行使された背景には、Lylyが少年劇団を使って論争に介入し、その際にLylyが、論争そのものの焦点―すなわち、国教会の主教システム(episcopacy) ―それ自体に触れるような芝居を投入した可能性も指摘した。 研究期間全体を通じて本研究では、1570年代・80年代のエリザベス朝期における宮廷政治文化と演劇興行の接続・相互作用に関して調査を行い、少年劇団が演劇の起業に与えた影響に注目した。特に、少年劇団とGascoigne、Peele、Lylyなどの関連する劇作家に注目し、彼等の政治・宗教的位置と、演劇産業成立に果たした触媒的機能を探求した。その結果、少年劇団と関わった劇作家が、擡頭期にあった商業演劇に技術と資源を持ち込んだこと、また宗教的要素の過剰投入が劇団機能そのものを停止させてしまったことを明らかにした。
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