2014 Fiscal Year Research-status Report
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26370271
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉国 浩哉 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50600186)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 米文学 / ロマン主義 / 批評理論 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
Nineteenth Century Literatureに投稿したバートルビー論は、12ヶ月に及ぶ長い査読の末、若干の修正の後で再提出ということになったので、27年度中に仕上げて受理されることを目指す。 11月に行われたロドルフ・ガシェ氏を招聘してのセミナーは、哲学における判断力論という面から、ロマン主義思想を関心の中心に据える本研究にとってとても有意義であったが、それだけではなく、ガシェ氏本人からも本研究の発表であるポー論に対して鋭い指摘がなされ、アメリカン・ルネサンスにおける「想像力」の問題について注意を向けるよいきっかけとなった。 3月にアメリカ合衆国シアトルで行われたAmerican Comparative Literature Associationの年次大会では、Europe and Its Otherというセミナーを主催し、本研究代表者自らも"Romanticism in Transit"と題する発表を行った。このセミナーでは、様々な観点から「ヨーロッパ」という概念と、それがその「他者」と切り結ぶ関係が考察されると同時に、「アメリカ」や「アジア」などの「ヨーロッパ」とは異なる共同体の理念についても検討がなされた。本研究の発表の中でも、エマソンとメルヴィルのテクストを読みながら、そこにおけるロマン主義的な自由の概念が「注意」の行動と結びつき、さらにそれが伝統を共有しない新しい共同体の可能性の条件となっていることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度初頭に計画したように、研究が進んだ。「自由」という概念を中心に、メルヴィルについてもかなり理解を深めることができたと同時に、エマソンについてもかなり研究を進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
思想史的研究としては、カント、メルヴィル、エマソンに加えて、アメリカとヨーロッパとのあいだに介在した作家たちに関する考察が必要になる。つまり、コールリッジ、カーライル、フラー、ヘッジらに関する研究である。これら哲学と文学との伝達関係について歴史的に検証した後、あるいはそれと並行して、M. H. Abrams前後から始まる現代のロマン主義理論をまとめ、その文脈でアメリカン・ルネサンスを位置づける。その際に、昨今のいわゆる”Trans-Atlantic"研究との関連づけの可能性も併せて検討してみたい。
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Causes of Carryover |
物品費、とくに書籍のための費用が想定していたよりもやや少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費が想定していたよりもやや多くかかるので、そちらで使用したい。
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Research Products
(3 results)