2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370271
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉国 浩哉 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50600186)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / 美学 / 批評理論 / ロマン主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
長期間にわたって査読されていたメルヴィル論 "Kant with Bartleby: A Fate of Freedom"は、修正の後Nineteenth Century Literatureによって受理された。2016年6月号または12月号に掲載されるとのことである。19世紀英米文学研究としては権威ある雑誌であるので、本研究の成果としては一つの大きな達成であると言える。 5月には日本英文学会全国大会における「美学とリベラリズム」と題されたシンポジウムで、「アメリカン・ルネサンスの美学」と題する発表を行った。それは、カント哲学ならびにヨーロッパのロマン主義の「後」に起こった文学運動としてラルフ・ウォルド・エマソンの「アメリカの学者」を読む試みであり、とくにエマソンが考える「読むこと」という概念をスタンリー・キャベルの哲学を参照しながら検討した。 3月にはAmerican Comparative Literature Associationの全国大会で"On Imagination and Art"というセミナーに参加し、"The Sublime and the Novel”と題する発表をおこなった。これは、カントの崇高論における想像力の働きを積極的に評価した上で、その崇高なものを小説というジャンルと結びつける試みである。このときカントと小説を結びつける上で、特に重要だったのがフレデリック・ジェームソンのリアリズム小説論とジャン・フランソワ・リオタールの熱狂論である。ここで想像力を経て、崇高と小説が結びつくことができる。これは昨年のセミナーでのロドルフ・ガシェによるコメントを受けてのものである。つまり、「想像力」の意義の再検討である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
どちらかと言えば順調だが、年度初頭に計画したマーガレット・フラーやフレデリック・ヘンリー・ヘッジらがのこした文献を調査する前に、「崇高」の概念やその文学との関連を検討することとなった。つまり、本研究の研究対象である「アメリカン・ルネサンスの思想史的背景」の歴史的実証を行う前に、より抽象的・理論的な思想的連関を研究したのだが、それはフラーやヘッジらアメリカ・トランセンデンタリズム周辺で書かれたテクストがかなりの量、残されているからであり、それらを本研究の予備的考察として簡潔に整理するためには、確固とした限定的なロマン主義の概念ならびにそれにもとづく「文学」の概念を把握しておくことが必要であると考えたためである。 現在は、フラーやヘッジの研究を開始しているが、実際、この理論的作業のおかげでマテリアルの文脈付けがよりスムーズに行われている。
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Strategy for Future Research Activity |
ACLAで発表した小説論をさらに発展させる。つまり、ヘーゲル哲学にもとづくルカーチ・ジェームソン路線の小説論を、カント哲学とも接続することを試み、その成果を紀要論文として発表する予定である。この小説論は、この時点では小説一般の理論に留まる予定であるが、その後、このような「小説」とアメリカ文学との(とくにアメリカン・ルネサンスとの)関係を検討し、それを3月のNorth East Modern Language Associationで発表する。 9月にはアメリカの哲学者、ロドルフ・ガシェを招聘し、"History, Story, Storytelling"(仮題)というセミナーを開催する。ここで哲学と文学との関連についての考察がさらに深められると期待している。
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Causes of Carryover |
昨年度の使用計画提出後に、デリダ研究で知られるロドルフ・ガシェ教授の平成28年度招聘の計画が持ち上がったために、その費用を前もって確保しておくため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ロドルフ・ガシェ教授招聘のための費用として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)