2014 Fiscal Year Research-status Report
18-20世紀の旅行記によるネットワークの形成とジャンル間の相互影響に関する研究
Project/Area Number |
26370286
|
Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
天野 みゆき 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (50258282)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 旅行記 / チャールズ・ディケンズ / マーク・トウェイン / ジョージ・エリオット / シャーロット・ブロンテ |
Outline of Annual Research Achievements |
<チャールズ・ディケンズとマーク・トウェイン> 先行テクストによって蓄積されたナイアガラの表象に、二人の作家がいかに反応し、自らのナイアガラを描き出しているか、インディアンと移民の問題をいかに提示しているかを考察し、両者の関係を探った。彼らが描き出したのは、歴史と社会に関わる問題提起とともに、彼ら自身の興味や嫌悪、葛藤が複雑に交差する風景である。(論文1)(学会発表1) <ジョージ・エリオット> 1)エリオットが旅をどのように詩に表現しているかに焦点を当てた。彼女はスイスとドイツを旅した際に農民の生活を垣間見た経験から、「アガサ」を生み出した。この詩において、エリオットがいかにカトリック、「聖母崇敬」「巡礼」の慣習や、音楽的なイメージを巧みに用いているかを論じ、このような技法によって聖母マリアとアガサに共通する精神の崇高性だけでなく、聖母マリアの生涯とアガサの「人生という旅」を重ね合わせつつ、アガサと村人たちの信仰のありようを描き出していることを示した(学会発表2)。 2)アメリカの学術誌 George Eliot - George Henry Lewes Studies の編者ウィリアム・ベイカー氏より依頼されて、日本におけるエリオットとルイス研究の近年の動向を同誌に紹介した。(論文2) <シャーロット・ブロンテ> 『教授』はブロンテ自身のブリュッセル留学体験を色濃く反映しつつ、異なる形とレベルの旅を描いた作品であることを明らかにする論文を執筆した。三人の主要人物の ambition をめぐる旅はそれぞれの自己実現あるいは問題追求の旅であるにとどまらない。作者の関心に基づく歴史、民族、宗教的連想により、個人の体験と民族や国家の体験を重ね合わせ、いろいろな問題を提起する、小説と旅行記が接近した興味深いテクストである。(日本ブロンテ協会設立30周年記念論集に掲載予定。)
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の成果を二回、学会のシンポジウムで発表し、ディケンズとトウェインを比較した発表に加筆、修正を加えた論文はすでに入稿しており、平成27年4月に出版される学会誌『マーク・トウェイン研究』に掲載予定である。エリオットに関する発表についても論文を執筆中であり、平成27年中には出版予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、小説と旅行記(手紙等)の両方を執筆した作家に焦点を当てて研究を進めていく。平成27年度は特に、ジェイン・オースティンについての研究を行い、成果を平成27年10月の学会で発表予定である。 また、旅をめぐる興味深い問題を提起しているアメリカの詩人、エリザベス・ビショップについても研究し、小説や詩において旅がどのように問題化されているかについての考察を深めていく。
|
Causes of Carryover |
次年度に国際学会(イギリス)での発表と研究調査を予定しているので、その旅費に使用したいと考えたためである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のように、イギリスでの学会発表と研究調査のための旅費として使用する。
|
Research Products
(5 results)