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2016 Fiscal Year Research-status Report

近代英文学における日本の表象に関する実証的研究

Research Project

Project/Area Number 26370296
Research InstitutionTokyo Woman's Christian University

Principal Investigator

原田 範行  東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (90265778)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2019-03-31
Keywords近代英文学 / 日本表象 / 好奇心(curiosity) / 言説空間 / 実録 / フィクション / 旅行記 / 地図の東西交流
Outline of Annual Research Achievements

研究3年目にあたる平成28年度は、初年度における18世紀初頭のイギリスにおける日本表象に関する基礎調査、および2年目における3人の文人(ジョージ・サルマナザール、ダニエル・デフォー、ジョナサン・スウィフト)の日本表象に関する基礎調査に続き、特に、サルマナザールとデフォーに関する研究を遂行した。その主な内容は三つある。第一には、特にサルマナザールに関して伝記的に不明な部分(詐称対象が日本人から台湾人に変化する、渡英以前の事情)についての調査、第二には、サルマナザールおよびデフォーの日本表象の典拠となる日本関係文献の精査、そして第三には、スウィフトも含め、サルマナザール、デフォー、スウィフトの日本表象に関わる相互的影響関係について、である。第一の、サルマナザールの渡英以前の伝記的詳細については、なお不詳な部分も残されているが、特に、当時のヨーロッパ大陸で流布していた、そしてサルマナザールが確実に接していたであろう、日本関係のフランス語およびオランダ語文献についてほぼ特定することができた。第二の、サルマナザールおよびデフォーが参照した日本関係文献調査では、やはりなお追加調査が必要ではあるものの、スウィフトの場合と同様、かなりの確度でその典拠を特定することができた。ただし、デフォーは、『ロビンソン・クルーソー』第二部において、日本の記述を先送りし、結局その部分を仕上げることなく没しているので、彼が(実現はしなかったものの)構想していた日本表象や必要としていた所蔵文献以外の文献などについては、なお追加調査が必要である。第三の、三人の文人と日本表象に関する相互関係についても一定の見通しを得るに至った。ただこの相互関係は、かなり迂回的なもの、すなわち、影響を受けているがゆえに言及しないといった性格のものもあり、そこに見られる三者のフィクションの創意については、なお補足研究が必要である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究3年目を終え、近代英文学における日本表象に関する基礎的調査、ならびに、サルマナザール、デフォー、スウィフトという重要な三人の、日本表象に関わる伝記的詳細と作品成立事情、典拠した文献や地図などについて、ほぼ明らかにすることができた。なかでも、従来、伝記的事情がほとんど分からなかったサルマナザールの、特に渡英前の行動を、彼が接したであろう文献資料から考証したこと、また、デフォーの蔵書目録(ヘルムート・ハイドンライヒによる)には記載されていない日本文献への調査が進んだことは、当初の予想を上回る研究成果と考えられる。もちろん、これらの調査結果をさらに分析・精査する作業が、研究4年目である平成29年度には必要となる。サルマナザールの『フォルモサ』にせよ、デフォーの『ロビンソン・クルーソー』第2部(日本への言及が見られる部分)にせよ、『ガリヴァー旅行記』にせよ、いずれも実録を十分に熟読玩味した後に創作されたフィクションであるから、近代イギリスの言説空間における実際的な日本表象と、文人によるフィクションという形での利用の間には複雑な創作過程や経緯が存在し、そのことの分析・考察にはなお多少の時間を要するであろう。また、文人たちが目にしたと推定される地図についても、その流布状況、特にいずれも多くの異本が存在するので、その詳細な系統調査と文人たちの伝記的状況とを綿密にすり合わせるような作業がなお必要である。ただこれらは、研究4年目の研究計画として当初から予定されている文献や地図などの具体的な東西交流の調査研究と同時並行的に進めることができるので、研究計画に大きな変更を生じさせるものではない。総合的にみて、研究3年目を終えて、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。なお、平成28年度には、研究成果をまとめた論文執筆なども進み、その多くは平成29年度中に発表・刊行される予定である。

Strategy for Future Research Activity

本研究は現在まで、概ね順調に進んでおり、研究4年目にあたる本年度、および最終年度にあたる平成30年度はいずれも当初の計画通り、研究を遂行する予定である。すなわち、本年度は、研究の第三段階として、17世紀後半から18世紀初頭にかけての、文献や地図類そのものの東西交流の状況を調査・分析することを中心とする。具体的には、オランダおよびイギリス東インド会社経由で日本や中国からヨーロッパに伝わった文献の広がりを明らかにすることである。もちろん当時の記録や目録類には欠落もあり、包括的な書誌作成は甚だ困難であるが、輸出入が明らかになっている部分だけでも、これを整理し、デフォーやスウィフト、さらには青年時代のスウィフトを秘書として遇したウィリアム・テンプルのようなオランダ通の政治家などの蔵書を比較検討することにより、文献や地図といった、具体的なモノから見える情報の東西交流の姿を一定程度明らかにすることができよう。そしてそのことは、サルマナザール、デフォー、スウィフトらの作品に見られる日本表象の具体的現実的な感覚の諸相を明らかにすることにつながる。既にこれまでの成果の一部を論文等にまとめ始めているが、最終年度である平成30年度には、研究成果を包括的にまとめて論文および著書の形で公にするとともに、総括シンポジウムとして、本研究の成果を国内外に問い、また近代英文学における日本表象に関する新たな課題等を整理する機会を設けたい。そのための準備(招聘者の選定と打診、招聘時期の選定、シンポジウムでの議論の概要作成など)も本年度に進める予定である。なお、本研究では、近代英文学における日本表象を、代表的な三人の文人に絞って研究することとしているが、三人の表現行為をより客観的に考察する意味でも、その周辺、特に、当時の定期刊行物における日本表象を、本年度、三人の文人と関係する形である程度整理しておきたい。

Causes of Carryover

次年度使用額が発生した理由は次の二つである。一つは、調査研究の結果を整理するなどの作業や研究成果公開のためのウェッブサイト制作などを念頭においた人件費支出がなかったことである。これは、一つには、研究代表者自身が、分析をしながら資料の整理作業をおこなったため、結果として、資料整理補助の人件費を必要としなくなくなったこと、および、研究成果のウェッブサイトでの公開には、なお慎重を期すべき調査項目が残ったためである。ウェッブサイトの制作については、内容そのものはすでにある程度まで完成しており、情報の正確さを吟味したうえで、平成29年度には公開を予定している。もう一つの理由は、特に地図に関する文献の収集が、一般の文献に比べて遅れ、結果として、平成29年度における調査と合わせておこなうことにしたためである。これも平成29年度の調査研究の中で、十分に補うことができるものと考える。

Expenditure Plan for Carryover Budget

上述の通り、平成29年度には、情報の正確さと研究の進捗に鑑みて保留してきた、研究成果公開の手段としてのウェッブサイトの公開を予定しており、この費用として少なくとも約10万円の支出が見込まれる。また、地図関係の書籍については、特にイギリスの17世紀から18世紀にかけての地図目録、および異版に関する重要な事例研究などを、イギリス、オランダ、日本にわたって調査する必要があり、その基礎的文献収集に費用の支出が見込まれる。このような使用計画をもって平成29年度の研究を遂行する予定であり、次年度使用額は、本来の研究計画を十全に達成するものとして使用することになる。

  • Research Products

    (9 results)

All 2017 2016

All Journal Article (2 results) Presentation (4 results) (of which Invited: 2 results) Book (3 results)

  • [Journal Article] 海外文学―イギリス文学2016

    • Author(s)
      原田範行
    • Journal Title

      文藝年鑑

      Volume: 10 Pages: 125-28

  • [Journal Article] 秘められた東西交流2016

    • Author(s)
      原田範行
    • Journal Title

      三田評論

      Volume: 1205 Pages: 57-57

  • [Presentation] ジョンソンとヒューム―virtueとmoralのイギリス18世紀2016

    • Author(s)
      原田範行
    • Organizer
      科研費「近代イギリスの女性たちの言語態と他者―感受性、制度、植民地」公開研究会
    • Place of Presentation
      東京大学(東京都目黒区)
    • Year and Date
      2016-12-18
    • Invited
  • [Presentation] 「教室の英文学」を考える2016

    • Author(s)
      原田範行
    • Organizer
      日本英文学会関東支部第13回大会
    • Place of Presentation
      フェリス女学院大学(神奈川県横浜市)
    • Year and Date
      2016-11-02
  • [Presentation] 先人たちはシェイクスピアをどう読んできたか2016

    • Author(s)
      原田範行
    • Organizer
      日本シェイクスピア協会第55回大会
    • Place of Presentation
      慶応義塾大学(東京都港区)
    • Year and Date
      2016-10-09
    • Invited
  • [Presentation] 子どもの誕生とフィクションの変容―ディケンズにみる18世紀作家の方法的懐疑のゆくえ2016

    • Author(s)
      原田範行
    • Organizer
      ディケンズ・フェロウシップ日本支部
    • Place of Presentation
      中央大学(東京都千代田区)
    • Year and Date
      2016-10-08
  • [Book] London and Literature, 1603-19012017

    • Author(s)
      Noriyuki Harada(原田範行)、Gerald Dickens、Toru Sasaki、James Tink、Barnaby Ralph、Miki Iwata、Masaaki Takeda、Neil Addison、Midori Niino、Yui Nakatsuma、Yusuke Tanaka、Angela Davenport
    • Total Pages
      156+xiv(pp. 65-77を執筆)
    • Publisher
      Cambridge Scholars Publishing
  • [Book] セクシュアリティとヴィクトリア朝文化2016

    • Author(s)
      原田範行、田中孝信、要田圭治、閑田朋子、侘美真理、本田蘭子、市川千恵子、川端康雄、武藤浩史
    • Total Pages
      390+22(pp. 261-291、377-380を執筆)
    • Publisher
      彩流社
  • [Book] 文学都市ダブリン2016

    • Author(s)
      原田範行、木村正俊、桃尾美佳、岩田美喜、高倉章男、宮崎かすみ、森川寿、佐藤容子、山崎弘行、坂内太、結城英雄、堀真理子、佐藤亨、岩上はる子、中尾まさみ、伊藤範子、西谷茉利子、三神弘子
    • Total Pages
      436+xxii(pp. 27-44を執筆)
    • Publisher
      春風社

URL: 

Published: 2018-01-16  

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