2014 Fiscal Year Research-status Report
シェイクスピアの異性装上演における観客:異性配役の生む「笑い」と「魅力」
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26370297
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
阪本 久美子 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50319240)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 異性配役上演 / 観客研究 / シェイクスピア |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度計画に基づき、以下のとおり研究を進めた。 [文献および上演作品の調査] 国内で入手可能な観客および観客論関連の文献の調査、彩の国さいたま芸術劇場のオールメイル・シェイクスピア・シリーズ(蜷川幸雄演出)などの異性配役上演の視察を進めた。一方、平成27年2月26日~3月7日までイギリス連合王国に出張し、最新の文献および上演資料の閲覧、ドンマーウェアハウス劇場におけるオールフィメイルの『ジュリアス・シーザー』、劇団プロペラのオールメイル『ヘンリー五世』などのアーカイブビデオの視聴、および劇場における上演の視察を行った。 [アンケート調査のための準備および実施] 初年度ということもあり、劇場におけるアンケート調査の方法に関する文献、および基本的な統計学の文献を調査し、アンケート調査に関する全体的な方針を明確にした。次に、異性配役上演に関するアンケート調査のため、劇団および上演作品に即した質問事項を作成した。その後、2件のアンケート調査を実施する機会を得た。まず、平成27年1月には、宝塚歌劇団月組公演『ロミオとジュリエット』(オールフィメイル上演)のDVD視聴によるアンケート調査を行った。また、劇団スタジオライフ公演『夏の夜の夢』(オールメイル上演)のアンケート調査を、平成27年2月にウェストエンドスタジオにて行った。両件とも集計はほぼ完了したが、解析および調査結果の発表は次年度に行う予定である。また、アンケート調査に回答を寄せた観客からインタビュー調査のためのボランティアリストを作成した。 [ファンクラブの調査] 特にアンケート調査を実施した劇団に関して、ファンと呼ばれる観客層の実態を探るべく、ウェブサイトや SNS などからも調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異性配役上演の観客を研究するにあたり、初年度計画に基づき、以下のとおり研究を進めた。 1)観客、観客論、観客調査に関する文献を、おおむね読破することができた。また、上演調査においても、彩の国さいたま芸術劇場の『ロミオとジュリエット』(オールメイル)、劇団柿喰う客の『暴走ジュリエット』、『迷走クレオパトラ』、『完熟リチャード三世』(オールフィメイル)、劇団スタジオライフの『夏の夜の夢』(オールメイル)などを視察できた。その他に、過去の異性配役上演のDVDを視聴した。また、イギリスにおいて、オールフィメイルの『ジュリアス・シーザー』、オールメイル『ヘンリー五世』などのアーカイブビデオの視聴を行った。 2)研究のコアとなるべきアンケート調査に関して、まずは第一歩を踏み出すことができた。劇場におけるアンケート調査の方法に関する文献、および基本的な統計学の文献を調査し、アンケート調査に関する全体的な方針を明確にし、劇団および上演作品に即した質問事項を作成した。本年度は、宝塚歌劇団月組公演『ロミオとジュリエット』(DVD視聴)および劇団スタジオライフ公演『夏の夜の夢』に関して、アンケート調査を実施する機会を得た。また、全体像把握のためのアンケート調査では限界があるため、個々の観客へのインタビュー調査も必要であるが、そのためのボランティアリストを作成した。 3)アンケート調査を実施した劇団に関して、ファンと呼ばれる観客層の実態を探るべく、ウェブサイトや SNS などからも調査を行った。 以上のことから、研究はおおむね順調に進んでいると考えるが、一方で劇団の協力を取付けることや、規模を広げたアンケート調査を行うことの難しさを実感した。これらの問題点については、次年度以降の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も継続して、劇場における上演の視察、および過去の上演のDVDなどによる上演作品の調査、該当する上演作品の上演資料の調査を進める。また、観客に関する理論および上演調査を行うシェイクスピア劇に関する批評に関しても、随時最新の情報を得られるように継続しても目を配る。一方、本研究のコアとなる実際の観客調査に関しては、次年度もアンケート調査を複数回実行できるようにする。昨年、質問事項が劇場の制作部の意向に従わなかったために、最初のアンケート調査の試みに失敗した。このことは、その後質問事項を検討する上で大変役に立った。結果として、別の劇団よりアンケート調査を行うことを許可されるに至った。今後は、インタビュー調査も実行するために、ボランティアリストを活用したり、DVDの視聴会を企画したい。学生を動員した視聴会は、本務校では難しいため、他大学の教員に協力を求めることになるかもしれない。もう一つの方法として、ブログを立ち上げることを検討している。 現在以下の論文に取り組んでおり、次年度中に完成させて発表したいと考える。①観客調査の方法について―アンケート調査の実際および問題点に関して②オールフィメイルによるミュージカル『ロミオとジュリエット』に関して。 イギリスにおいては、ドンマーウェアハウスのオールフィメイル3作品中、昨年の『ヘンリー4世』のアーカイブビデオおよび可能ならば最新作を劇場で視察したい。オールメイルの劇団プロペラは、昨年度は教育用の短縮版以外の上演を行わなかったが、本年度の新作に関して、可能ならば視察のみでなく観客調査も行いたいと思う。
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