2014 Fiscal Year Research-status Report
ジョウゼフ・コンラッドの作品と「東洋の海」に関する研究
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26370298
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
設楽 靖子 武蔵大学, 総合研究所, 研究員 (10311242)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 英文学 / イギリス小説 / コンラッド / 東南アジア島嶼部 / イギリス商船 / ポーランド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英文作家ジョウゼフ・コンラッド(1857-1924)の生涯と作品について、19世紀後半の出身地ポーランドでの前半生、イギリス商船員としてアジア・アフリカなどでの見聞、19世紀末~20世紀初頭のイギリスに定住しての作家生活、という3つの側面を、それぞれの時代背景・文脈の中で読み解くことを試みるものである。本研究の特徴は、作家自らが船員として体験し作品の舞台とした「東洋の海」、すなわち19世紀後半の東南アジア島嶼世界に焦点を当てていることである。研究計画の3つの柱は、「文献調査」「現地調査」「アジア地域を拠点とする研究者とのネットワーク作成」である。 この構想に沿って、平成26年度は、国内外の関連学会への参加を積極的に行なった。まず、アメリカ・コンラッド協会主催でカナダ・バンクーバーにて開催された国際学会に参加し、研究発表の他、本研究テーマの紹介と関連研究情報の収集を行なった。このときの口頭発表を加筆修正した論文が同協会編集の専門誌に掲載可となった("Conrad and Lafcadio Hearn: Two Observant Wanderers Writing in Their Adopted Countries")。また、国内では、日本英文学会、日本コンラッド協会などの年次大会・研究会に出席し、本研究課題に関する研究情報の入手・交換を行ない、その成果として論文1点を紀要に投稿した(「コンラッドの短篇"The Secret Sharer"に隠された『帝国地図』」)。 「文献調査」の一環として、関連の一次資料および最新の研究動向を反映した研究文献の収集を行なった。 「アジア地域を拠点とする研究者との情報交換・ネットワーク作成」への準備として、日本におけるコンラッド研究・受容の基礎データを識者の協力を得て作成し、ウェブ公開に向けた作業を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年8月にカナダ・バンクーバーで開催されたアメリカ・コンラッド協会主催の学会Conrad: Conflict and Solidaritiesに参加し、「コンラッドと東洋の海」に関連したテーマで研究発表を行なった(題目は"Conrad and Lafcadio Hearn")。また、この学会参加の機会に、関連の一次資料に通じた海外の研究者から情報提供を得ることができ、必要な文献入手に取りかかることができた。ここでの口頭発表を加筆して同学会誌に論文投稿し受理された。同様に、国内の所属学会(日本ヴィクトリア朝文化研究学会、日本コンラッド協会など)の年次大会・研究会にも継続的に参加することで、関連の研究情報を得て、同時代の一次資料を発掘・参照した論文を紀要に投稿することができた。 なお、「現地調査」として、シンガポールおよびインドネシアでの実施を予定していたが、インドネシア外島部の政治情勢が確認できるまで延期することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
「文献調査」として、国内外の図書館・資料館にて調査を行なう。国内では、京都大学東南アジア研究センター館など、国外では、シンガポール(国立図書館、東南アジア研究所図書室、シンガポール大学図書館)とイギリス(国立公文書館、国立海事博物館)がその中心となる。また、一次資料の収集を重点的に継続する。 「現地調査」は、東南アジア島嶼部、具体的にはシンガポールを起点としインドネシア外島部に至る地域に赴き、現地で海域世界の過去・現在の状況を知る。訪問地点やルートについては、同地域を専門とする地域研究者にアドバイスを求める。 「アジア地域の研究者との継続した交流」に向けて、海外の学会に参加する、あるいはアジアでの研究事情に詳しい研究者を訪問する一方、国内で開催予定の日本コンラッド協会の全国大会をその交流の機会として有効に使う。
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Causes of Carryover |
海外の学会での研究発表およびその論文投稿を優先したことにより、当初計画していた「文献調査」および「現地調査」を延期したため、平成26年度使用予定の額を次年度に繰り越した。特に、現地調査として計画していたインドネシアへの渡航については、現地での政治情勢が確認必要となったため、次年度に回した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に予定していた「文献調査」(シンガポールおよびイギリス)は、時間が取れ次第、実行する予定である。 また、「現地調査」(インドネシア外島部など)については、具体的なコース案等の実施計画ができているので、現地状況を確認したうえで実行する予定である。
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Research Products
(3 results)