2014 Fiscal Year Research-status Report
惑星思考の核批評―英語圏と日本の核文学の横断的考察
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26370306
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
一谷 智子 西南学院大学, 文学部, 教授 (70466647)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 核批評 / H.G.Wells / B.Wongar / 戦争文学 / オーストラリア文学 / エコ・クリティシズム / 英語圏文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英語圏と日本の核・原爆文学を横断的に検証することで、従来の西欧と日本の核(原爆)批評の限界を超えた新たな核批評の可能性を模索することを目的としている。本研究課題の初年度にあたる本年度は、研究実施計画に従って、国内外の共同研究者の協力を得て、資料の収集と分析を中心に行った。特に、2015年3月半ばに2週間イギリスに滞在し、ロンドンのThe Senate House LibraryやThe British Libraryを中心に調査を行った。この調査では、核爆弾をはじめて文学作品に描き、のちの科学者による核兵器の開発に影響を与えたとされるH.G.Wellsの1914年の小説『解放された世界』を巡る文献の収集を両図書館のH.G.Wellsコレクションを活用して行った。当時の新聞記事や手紙などを含めた貴重な資料収集を通じて、核戦争を予言し、戦争と人類の滅亡を回避するために世界政府の樹立や人権に関する憲章を考案したWellsの思想を理解し、作品の解釈を進める上で大きな収穫を得た。 さらに、2014年8月9日には、神戸市外国語大学で行われた第27回エコクリティシズム研究学会において、「ニュークリア・サイクル:B.ワンガーの連作小説に見る惑星思考」と題した研究発表を行った。本研究発表では、従来の核批評で見過ごされてきたマイノリティの視点、特にオーストラリアの先住民が経験した核実験とウラン採掘に伴う二重の被害をとりあげた文学作品について論じた。 以上のように、本年は、英語圏文学の核批評の原点を探ると同時に、その周辺に位置づけられてきたマイノリティの視点からの核批評の研究を進めることで、今後の研究の展開への大きな足掛かりを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の収集はおおむね順調に進んでいる。一部作品分析の進んだものをまとめて、国内の学会の全国大会で発表し、今後の研究をさらに発展してゆくヒントを得ることができた。また、国際学会(ASLE Biennial Conference)での研究発表にも採択され、現在準備を進めている。シンポジウムを開催する予定であったが、招聘研究者の予定の関係で来年へと延期することになった。この点のみが変更点と若干の遅れと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度収集した資料の分析を進めてゆく。同時進行で、更なる資料収集を目指す。1年目の調査と分析の成果を6月にアメリカのアイダホで行われる環境文学の国際学会(ASLE biennial Conference)で発表する予定である。さらに学会誌と書籍の1章分として2本の論文にまとめて、来年度の出版を目指す。
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Research Products
(2 results)