2014 Fiscal Year Research-status Report
環境汚染問題への英語圏モダニズムの文化的介入法を分析する
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26370316
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 雄三 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (10273715)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小杉 世 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (40324834)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイリンガル性 / 英語圏モダニズム / 核実験被害 / タヒチ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、次のような役割分担のもと研究を実施した。(1) 南ウェールズにおける石炭作業とモダニズム(担当:山田雄三)(2) オセアニア地域におけるポスト石炭産業と文学(担当:小杉世) (1) 南ウェールズにおける石炭作業とモダニズム(担当:山田雄三):3月に大阪大学に招いて講演してもらったDaniel G. Williams教授(Swansea University)の講演記録を整理するうちに、南ウェールズ地域におけるbilingualismの問題の重要性に気づいた。そこでウェールズ語と英語とのbilingualismもテーマとして取り上げた小説家Margiad Evans, Glyn Jones, Emyr Humphreysの小説について、そのモダニズム的側面とbilingualismとの関係についてテクスト分析を行った。この研究成果は、10月に開催されたバージニア・ウルフ協会のシンポジウムにおいて、口頭にて発表した。 (2) オセアニア地域におけるポスト石炭産業と文学(担当:小杉世):9月に小杉が、仏領ポリネシアの大学図書館で、冷戦期の核実験に関する文献・視聴覚資料を閲覧、現地の出版関係者から関連文献の出版状況について情報を得るほか、自治独立を求めた政治家Pouvanaa a Oopaに関する最近の研究書などを入手した。また、タヒチ人作家Moetai Brotherson、核実験犠牲者の補償問題に取り組むNGO(Moruroa e Tatou)の代表者Roland Oldhamにインタビューを行った。3月の小杉の研究発表では、地球温暖化や海洋汚染、鉱山開発による土地荒廃や核実験に対して、Hone TuwhareやLemi Ponifasioなどのオセアニアの舞台芸術や詩、絵画が発するメッセージを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、産業化社会のひずみを英語圏モダニズム文学がどのように表象したかを明らかにする試みである。従来のモダニズム研究がメトロポリスばかりに注目して仮説を立ててきたことへの批判から出発した本研究だったが、イギリス国内の辺境地域ならびに、かつて植民地下いあったオセアニア地域の文学テクストを渉猟する過程で、ひじょうに意義深い文学テクストが見つかっている。これらのテクスト分析の分析およびオセアニア地域でのインタビューを含むフィールド調査は順調に進捗している。ただし今後の課題として、両地域の調査から得た知見をすり合わせて、総括的な仮説を提示できる段階に進まなければならないだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は次に挙げるふたつのテーマに関して、平成26年度に引き続き、テクストの分析ならびに現地におけるフィールド調査を実施する。(1) 石炭産業衰退とモダニズム (2) ポスト石炭産業と核開発政策下のオセアニア文学 (1) 石炭産業衰退とモダニズム :本年度は南ウェールズと深い関係にある作家のうち、Gwyn ThomasおよびRaymond Williamsに焦点を当てて、両者が石炭産業の衰退をどのように表象しているかを考察する。また、同じ時期に顕著になるエコロジー意識の胎動と彼らの分筆活動との相補関係を明らかにしたい。 (2) ポスト石炭産業と核開発政策下のオセアニア文学:前年度に引き続き、オセアニア地域を重点的に調査する。より具体的には、合衆国による核実験を題材にしたMaurice Shadboltらによる冒険小説の語りのストラテジーを明らかにしたい。
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