2015 Fiscal Year Research-status Report
トランス・アメリカ―19世紀アメリカと環カリブ海地域との文化交渉と文学的想像力
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26370330
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
庄司 宏子 成蹊大学, 文学部, 教授 (50272472)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / 植民地主義 / ポストコロニアリズム / 奴隷制度 / カリブ海地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究は、18世紀末の建国期から19世紀半ばのアンテベラム期にかけてアメリカ合衆国に生み出されたチャールズ・ブロックデン・ブラウン、レオノーラ・サンセイ、ナサニエル・ホーソーン、ソファイア・ピーボディ、メアリー・ピーボディ・マンなどの小説や旅行記を分析し、そこに現れた文学的想像力が、ハイチやキューバなど環カリブ海地域との歴史的、政治的な交渉のなかで生み出されてくることを論じようとするものである。当該年度は、1791年に始まり1804年のハイチ建国に至るフランス植民地サン・ドマングの奴隷反乱が、建国してまもないアメリカ合衆国にどのような影響を及ぼしたのか、ワシントン、アダムズ、ジェファソン政権のもとでのハイチ対応の変遷を辿るとともに、文学に描かれたハイチ表象を研究するべく資料収集、資料の読解に当たった。ハイチ革命は、アメリカの独立やフランス革命と同様な自由や平等の啓蒙精神に基づく政治システムの変化であり、18世紀末から19世紀半ばにかけての環大西洋革命の時代に起こったものである。その革命は世界で唯一の奴隷暴動の成功例となるが、当時の世界にあって黒人共和国は国際的な承認を得ることはなく、ジェファソンのアメリカでもハイチの存在は抑圧された。そうした公的な言説で抑圧された存在を文学的想像力はどのように表象するのか、アメリカ文学史のなかでもほとんど考察されていない19世紀初めのハイチ関連の小説を取り上げて考察した。こうした文学作品を研究の対象とすることは知られざる文学作品の発掘であるばかりでなく、アメリカ文学研究をアメリカとカリブ海地域との関係において考察するという研究方法の再編という意味でも意義深いことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究は、アメリカ文学を16世紀からはじまるヨーロッパによる植民地支配や奴隷制度の歴史を共有するカリブ海地域との政治的、文化的交渉において捉えることを目的とするが、研究対象としてこれまでアメリカ文学研究において論じられることのなかった小説や歴史的文献を入手することができている。今後さらに読解と分析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、アメリカ合衆国とカリブ海地域との政治的・文化的交渉を跡づける資料を入手し考察することで、国境を越えてアメリカスのなかに点在する文化的想像圏を明らかにするべく研究を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度の3月にアメリカ合衆国の大学図書館で資料収集をするべく海外出張を予定していたが、国内での研究会や論文執筆で忙しくなったため、海外出張をすることができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年年度に海外出張を行い、歴史的文献や論文などの資料収集に当たる計画である。
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