2016 Fiscal Year Research-status Report
世紀転換期「エキゾチック」への眼差しをめぐる英語の言説研究:イタリアから日本へ
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26370333
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
北原 妙子 東洋大学, 文学部, 教授 (90315820)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エキゾチック / ヘンリー・ジェイムズ / イタリア / 旅行文学 / 日本文化・日本人 / 英語圏文学 / 明治期日本 / ジャポニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本についての旅行記、滞在記、また日本を舞台にする小説などの言説に着目し、ジャンルを超え英語で描き出される日本像を検証し、20世紀への転換期に、どのような日本・日本人観が流通したか明らかにすることを目的とする。近年注目を集める「旅行文学」全般の研究にも資すると同時に、広義の英語圏文学研究として「日本」をめぐる文化的交渉の議論を活発化し、新たな知見を提供することが期待できる。 第3年目にあたる2016年は作家ヘンリー・ジェイムズの歿後100周年にあたり、その歿後記念論集にイタリアを舞台にした小説をめぐる論考を発表した(「実人生とフィクション―彫刻家トーマス・クロフォードと『ロデリック・ハドスン』)。またジェイムズの『イタリア紀行』を通じ、ヨーロッパにおける外部としての「イタリア」という「エキゾチック」な場についての考察を行い、論文の形にまとめて現在校正の段階にある。イタリアは作家にとって「エキゾチック」な周縁のまま、自己の曖昧な国籍やセクシュアリティについての深層意識を探り、帝国的基準である富裕なアングロ・ホワイトかつ異性愛者というアイデンティティを引き受け、中心に通用する自己形成を可能とさせる「場」であったと考えられる。 日本についてのノンフィクションでは、イザベラ・バードの『日本奥地紀行』における蝦夷地に対する視線に、『イタリア紀行』でみられたジェイムズのイタリア南部への視線と共振するものがあり、東洋・西洋それぞれでの「エキゾチック」なものに対する接点を見出せた。この仮説を深化させ、韓国のヘンリー・ジェイムズ協会で口頭報告する予定である。日本についてのフィクションは小泉八雲についてはテクストの大部分を読了したが、メアリー・フレイザーのフィクション分析を継続中である。両者の共通点・相違点を整理した上でどのような日本・日本人の表象がなされていたのか浮き彫りにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本に関するフィクションのテクスト分析が予想以上に難航し、もう一年かけ分析の精度を高め、論考を深化させたい。また最終年度につき、これまでの研究を総括して学会での口頭報告を予定しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
日本についてのフィクション、特にメアリー・フレイザーのテクストを精読し、小泉八雲との類似点・相違点を整理する。また「エキゾチック」な言説分析の総合的な考察として、日本・日本人像がノンフィクションとフィクションでどう異なるか、これまで扱ったオールコック、サトウ、バードらの旅行記を再度視野に入れ、検証する。
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Causes of Carryover |
2016年度中に精査すべき日本に関するフィクションのテクスト分析が予想以上に時間がかかり進まず、もう一年かけ分析の精度を上げ、論考を深化させたいため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上半期でメアリー・フレイザーのフィクションのテクスト分析を終え、小泉八雲のフィクションと比較考察する。下半期ではこれまで分析を進めてきた日本に関するノンフィクションのテクストも含めて総括的な分析を行う。 なお、2017年7月上旬に韓国で開催されるヘンリー・ジェイムズ協会にてジェイムズのイタリア旅行記とイザベラ・バードの日本旅行記を比較考察した口頭報告を予定している。
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Research Products
(1 results)