2015 Fiscal Year Research-status Report
アメリカン・ルネッサンス期の先住民作家William Apessとその文学
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26370339
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
小沢 奈美恵 立正大学, 経済学部, 教授 (80204197)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | William Apess / アメリカ先住民自伝 / A Son of the Forest / キリスト教徒のアメリカ先住民 / アメリカン・ルネッサンス / Conversion Narrative / Captivity Narrative / Slave Narrative |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、夏にアメリカへの調査旅行を行い、秋には1回の学会発表を行い、年度内に2本の論文(内1本は未発表)を完成した。 夏期休暇期間中(8月7日~17日)、アメリカでの調査を行った。ハーヴァード大学Widener、Tozzer、Houghtonの各図書館でWilliam Apessの時代の先住民の置かれた社会的、歴史的状況に関する資料調査を行った。Apessの故郷であるコネティカット州マシャンタケットのピークォット族居留地内博物館にある図書館は、あいにく閉館していたため、他のいくつかの図書館Boston Public Library、Massachusetts Historical Society、American Antiquarian Societyを回り、論文・書籍の収集を行った。 10月10日(土)には、日本アメリカ文学会第54回全国大会(於:京都大学)で「アメリカン・ルネッサンスにおける先住民自伝―William ApessのA Son of the Forest」という表題で発表を行った。これまで先住民自伝はアメリカン・ルネッサンス文学の中に十分に位置づけられてこなかったため、その重要性を論じた。 2016年3月「先住民自伝というジャンル」という論文を『立正大学経済学季報』(第65巻第3・4号pp 79-98)に掲載した。先住民自伝というジャンルが1980年代から、現代までどのように研究され、Apessの自伝はどのように分類されるのかを明らかにした。前年度秋の日本アメリカ文学会全国大会での発表の一部を基にしてWilliam Apessの自伝、A Son of the Forestに関する論文を完成したが、これは、まだ未発表である。 今年度に完成した2本の論文で、科研終了年度に発行予定の書籍の2章に当たる部分が完成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、科研以外の研究に時間を割く必要はなかったので、比較的、科研の仕事に集中ができた。論文は完成しても、完成時点に締切期間が合致し、掲載できる機関が少ないため、2本の論文中、後の1本は発表までは至らなかった。2015年10月の学会発表では、William Apessという先住民作家について、より広く知っていただくことができたのは、成果であったと考えている。 最終目標であるWilliam Apessに関する研究書の2章に当たる部分は、今年度でほぼ完成した。しかしながら、昨年度の遅れを取り戻すためには、なおいっそうの努力が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、3章のメソジスト宗派の果たした役割とWilliam Apessの宗教的作品論に取り掛かる。また、1章の19世紀初頭の先住民の置かれた社会的・歴史的状況に関する論文も、今年度中に少しでも書き進めておく必要がある。 2016年度前半は、科研以外の論文(ヘンリー・デヴィッド・ソロー生誕150周年記念論集への寄稿)に力を割かなければならないので、後半以降に科研に関連した論文に集中する予定である。前半にも資料を読んで整理するなどの作業は、行う予定である。 論文の予定としては、William Apessの2編の作品、The Increase of the Kingdom of Christ: A Sermon and the Indians: The Ten Lost Tribes(1831)とThe Experiences of Five Christian Indians of the Pequot Tribe(1833)を論じる予定である。 19世紀にメソジストという宗派が第二次覚醒運動とともに、どのように先住民や黒人などの社会の底辺の人々を取り込み、声を発する機会を与えたのか、また、その思想がどのようにApessの文学や同時代の文学に影響を与えていたかについては、2017年度の学会発表も視野に入れて研究を進める予定である。
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