2015 Fiscal Year Research-status Report
プルータルコス作品の実証的研究:文化・思想的背景に即した総合的再検討
Project/Area Number |
26370361
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小池 登 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (10507809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬口 昌久 名古屋工業大学, 工学研究科, 教授 (40262943)
松原 俊文 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (60645951)
平山 晃司 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (30581095)
佐藤 昇 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (50548667)
中谷 彩一郎 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (30527883)
木原 志乃 國學院大學, 文学部, 教授 (10407166)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プルータルコス / 西洋古典学 / 西洋古代史 / 西洋古代哲学 / 古代ギリシャ / 古代ローマ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の第2年度となる平成27年度においては、当初の予定通りまずは前年度から引き続いて基本的な作業を進めた。すなわち、前年度開始した作品の実証的な読解、関連する先行研究の調査・概観、ならびに諸文献資料の積極的な蒐集を、それぞれに推進するとともに、作品研究上の諸問題について哲学・史学・文学の各々の立場から検討・考察を進めた。初年度は研究の散漫を回避すべくプルータルコス作品の中でも特に『英雄伝』に焦点を絞ったが、本年度は『モーラーリア』の検討にも着手した。 各研究者の分担および当面の課題としては、引き続き瀬口、木原(当初の予定通り連携研究者から研究分担者に本年度なった)がプルータルコス作品の哲学的諸相を、松原、佐藤が同じく史学的諸相を、小池、平山、中谷が同じく文学的諸相を担当した。全体の総括は小池が兼ねた。 加えて特に本年度は、日本西洋古典学会第66回大会・シンポジウム「プルータルコスと指導者像」(6月・首都大学東京)の場で国内の研究者に向けて研究成果の中間報告を行い、『西洋古典学研究』64号にも報告を掲載した。また哲学・史学・文学の3分野の緊密な連携を行う定例研究会については、当初の予定より1回多く、年3回開催した(5月・首都大学東京、8月・神戸大学、12月・國學院大學)。これは6月に行った中間報告の手応えが予想以上に大きかったことを受けて、研究の総合性をさらに高めるべく、早期に外部の研究者を招いて広く意見交換を図ったためである。すなわち12月の研究会においては、本研究組織7名全員に加えて、哲学・史学・文学それぞれ1名の研究者を招き(近藤智彦(北海道大学・哲学)、澤田典子(千葉大学・史学)、勝又泰洋(京都大学非常勤講師・文学))、研究成果報告ならびに相互批判・意見交換を行うとともに、研究全体の総合的な成果報告に向けて、論集の公刊のための企画・検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プルータルコスの作品は、西洋古典作品の中でもとりわけ世に広く親しまれ、また学術上の重要性が高いにもかかわらず、国内の専門研究は現在ほとんど進んでいない。このような背景のもと本研究は、文献学的な基礎作業に基づいた実証的な作品読解を進めるとともに、哲学・史学・文学の3分野が緊密に連携する共同研究によって、同時代的背景と作品の連関の諸相を分析し、古典古代の中・長期的観点から作家の位置づけを再検討することで、プルータルコス作品の特質と意義を実証的に明らかにすることを目的としている。 本年度においてはこの目的に沿って、当初の計画通り、研究の基礎作業が前年度から引き続き推進されるとともに、全国学会のシンポジウムならびに学会誌で研究成果の中間報告が行われた。加えて哲学・史学・文学の緊密な連携を図るべく開催している定例研究会については、研究組織外の研究者も招聘して当初の予定より1回多く開催することができた。他方で研究図書の整備については、若干の遅延により一部の欧文資料等の購入を翌年に繰り越したが、次年度に向けて支障は小さいと考えられる。以上のような状況を総合的に判断して、おおむね順調に進展していると自己評価するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度の進捗状況がおおむね順調に進展していると自己評価できるものであったため、最終年度となる第3年度においても当初の計画通りに進める予定である。すなわちまず基本的な作業としては、前年度から引き続いて研究資料の整備に努めるとともに、各種先行研究を調査・概観し、各研究者が各々の専門分野に基づいて検討・考察を加える。それと同時に、年2回の定例研究会を開催し、個別研究の進捗報告、情報交換、問題提起、相互批判を行う。ただし研究の重点は、先行研究の調査・概観から検討・考察への移行を経て、個別分野の成果を踏まえた総合・総括を中心とする段階に入る。また『英雄伝』を中心とする作品読解に一定の見通しをつけ、『モーラーリア』の諸作品も可能な限り考察範囲に含める予定である。 最終年度の各研究者の分担としては、引き続き瀬口、木原がプルータルコス作品の哲学的諸相を、松原、佐藤が同じく史学的諸相を、小池、平山、中谷が同じく文学的諸相を担当し、各々の研究を進める。全体の総括は小池が兼ねる。 第3年度の特記事項は、以下のとおりである:(1)研究全体の総括段階に入るため、先行研究の調査への傾注は減じられる。(2)定例研究会を2回開催する。特に2回目の定例研究会は、研究成果の公刊に向けた最終的な総合検討会とする。どちらにおいても研究組織外の研究者を招いて広く意見交換を行う。(3)各自の成果を論文にまとめるとともに、研究の総合的な成果を公表すべく、論集の公刊のための準備を進める。
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Causes of Carryover |
本研究の費目として主を占めるのは、研究資料整備のための物品費と、定例会開催のための旅費である。いずれもおおむね当初の計画通り順調に進行したが、一部の欧文図書資料については、年度中の購入の目処が立たない等の利用により、予定していた購入を次年度に繰り越した。特に本年度は、研究全体の進展により新たな知見を得たこと、国内の研究者に向けて中間報告を行い広く反響を得たこと、定例研究会に研究組織外の研究者を招いて積極的に意見交換を行ったこと等による諸成果を反映させて、整備すべき図書資料の選定を一部で見直した結果、若干の遅延が生じ年度中の購入を見合わせた部分があった。このような理由により、次年度使用額が生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究全体がおおむね順調に進行している状況を受けて、当初の計画通り、研究遂行上必須となる研究資料整備のための物品費と、年2回の定例研究会開催のための旅費を中心として研究費を使用する予定である。研究資料として具体的には、本研究の遂行上必須となるもの、すなわちプルータルコス研究関連図書、および広く西洋古代哲学、西洋古代史、西洋古典文学関係の専門的研究書、さらに原典校訂本、注釈書類等を引き続き整備する。27年度に生じた次年度使用額については、上述の通り、研究遂行上必要となる図書資料について購入を次年度に繰り越したものであるので、該当する資料の購入にあてる予定である。
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[Book] Aristocracy in Antiquity: Redefining Greek and Roman Elites2015
Author(s)
Nick Fisher and Hans van Wees (eds.), Alain Duplouy, Guy Bradley, Laurens E. Tacoma, Antoine Pierrot, Stephen Lambert, Noboru Sato, Nick Fisher, Olivier Mariaud, James Whitley, Thomas J. Figueira, Gillian Shepherd
Total Pages
390 (Noboru Sato担当箇所:203-226)
Publisher
The Classical Press of Wales
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