2014 Fiscal Year Research-status Report
マザリナード文書の電子化:古文書研究とデジタル環境の親和性に関する総合的研究
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26370364
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
一丸 禎子 学習院大学, 付置研究所, 講師 (80567313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PATRICK Rebollar 南山大学, 外国語学部, 教授 (50329744)
MARE Thierry 学習院大学, 文学部, 教授 (60188654)
松村 剛 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (00229535)
アヴォカ エリック 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20612261)
PERRONCEL Morvan 中京大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90339630)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マザリナード / アーカイヴ / コーパス / 17世紀フランス文学 / Fronde / Mazarinades / フロンドの乱 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本で電子化された、世界で最も大きなマザリナード文書コレクション『マザリナード集成』(東京大学所蔵)を核として「古文書研究とデジタル環境の親和性」を探求することにある。これはマザリナード研究の未来を開き、新しい方向に導くのみならず、人文研究に新たな方法論を提案するものでもある。この3年間の重要な目標のひとつは、日本から発信しているこの新しい研究方法をより多くの人に理解していただき、かつ最大限に利用してもらうことである。そのために国際シンポジウムと展示という方法をとることにしたのだが、当該年度の最も大きな成果は、マザリーヌ図書館ならびにフランス国立図書館BNFと協力し、フランス学士院の後援を得てシンポジウムの開催(H27年6月10-12日)を準備したことである。 この国際シンポジウムは公募により、査読を経て32名の発表者(応募者は70名)が選ばれた。国籍はフランス、オランダ、ベルギー、ドイツ、イタリア、ポーランド、イギリス、デンマーク、アメリカであり、日本からも4名の発表がある。準備委員会は学術(11名)と運営(12名)に分け、選別に当たっては公平を期しかつ学際性を重視した。特筆すべきは本研究の呼びかけに対し多くの大学や研究機関から協賛が寄せられたことである。これは本研究の有用性が認知された結果であると考えられる。 本研究は同時に、単に古文書をデジタル化して公開するだけでなく、Web上での知の集積と共有の方法、知的財産の保護、研究者コミュニティの健全な運営までを総合的に考察し、問題点を解決することを目指しているが、このたびの国際シンポジウムの組織・運営は外国の研究者との交流、学際的な意見交換の機会を拡大した。さらに、このシンポジウムへの応募をきっかけに本研究の電子コーパスを利用する研究者が増え、新しい研究者コミュニティは草創期から次の段階へ向かっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フランスにおける国際シンポジウムの準備は「研究実績の概要」に記述した通りであり、当初の予想を上回る参加応募者があった。また、シンポジウムを支える電子コーパスの充実に関しては、初期の基盤よりも堅牢なアプリケーションへの移行、カタログ・インデックス機能を強化し、語彙検索だけでなく、各文書の文献情報(著者名、タイトル、出版年、出版地)での検索や並び替えを可能にする等の改良を実現した。それぞれの文書の校訂も進められ、注解なども増えてきており、最新の成果を反映するために内容は更新され続けている。さらに出版年代別の一覧を作成する等、すでにこの電子コーパスは、言語コーパスの枠を超え、マザリナード研究のアーカイヴとして形を整えつつある。 H27年度フランスにおける国際シンポジウムでは、同時にマザリーヌ図書館において初めての「マザリナード展」が開催される予定であり、そこで本研究の核となっている東京大学所蔵『マザリナード集成』の「実物」の紹介をする予定である。そのための文献調査と撮影を東京大学総合図書館で行った。これらの資料も将来的には本研究サイトで公開するコンテンツになる予定である。 東京大学総合図書館とは十分に協議し、H28年度に日本国内での国際シンポジウムと展覧会をするための準備も予定を繰り上げて開始した。本研究の重要課題はWeb上の仮想(デジタル化した古文書)と現実(物質としての古文書)を循環・融合させることにより、古文書研究とデジタル環境の親和性を明らかにすることだが、国際シンポジウムと展示により、着実にその証明へと向かっている。 ただし、このように当初の計画以上に進展した理由としては、本研究グループの努力だけでなく、研究の有用性を認知し後援してくださった多くの方々の支えによるものでもある。
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Strategy for Future Research Activity |
最優先事項はH27年度フランス(パリ)、H28年度日本(東京)での二つの国際シンポジウムと展示内容の充実を果たすことである。本研究はWebサイトを使いそこを作業場として古文書研究を進めることを提案するものであるが、現実の世界でこの新しい方法の成果を可視化していくためである。そのため時間と予算はこの二つの実行に優先的に配分する。実際、招聘者を日本に呼ぶための旅費などを工面する必要があるため、新たにデジタル化したマザリナード文書を技術者に頼らず研究者がコーパスに加えられるようにするプログラムの開発は一旦保留とする。こうした変更が可能なのは、「基金」という制度のおかげである。 しかしながら、そのために電子コーパスの機能の改良がおろそかになってはいけない。利用が増えていることからも、内容の充実とともにセキュリティにも最新の注意をもって対処する。今回の文献調査で東京大学『マザリナード集成』44巻の物理的劣化がさらに進んでいることが確認された。早急に、直接閲覧するのと同等かそれ以上の環境をWeb上の仮想空間に作り出す必要がある。これらの課題の緊急性を考えると、ボルドー市立図書館から寄贈を受けた1000点あまりのマザリナード文書(デジタル画像)の処理(重複の排除、デジタルテクスト化)は低い優先順位となり、次の課題になる可能性が高い。 教育現場への還元は予定通り大学の専門科目等で行う。フランスにおいても毎年パリ第三大学博士課程セミナーに招聘されているが、これはできるかぎり続けていく。このセミナーは映像、あるいは音声によりネット配信され、この研究の分野で日本がリードしていることを明確にすることになるからである。 徐々に形を整え機能し始めている研究者コミュニティの創成に関しては、健全かつ合理的な運営を目指して努力する。本研究の透明性は引き続き研究ブログでの記録公開にて担保する。
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Causes of Carryover |
H27年度フランス国際シンポジウムへの日本からの参加者、H28年度に日本で開く国際シンポジウムに招聘する外国人研究者の旅費を確保するため、新しいプログラムの開発、ならびに画像テクストからテクストを転写する等の当初に予定していた業務委託を保留したことによる。これは二つのシンポジウムの内容の充実を最優先事項としたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度国際シンポジウムへの日本からの参加者は一部フランス国立図書館等が負担してくれることになったので、その分をH28年度の招聘予定の外国人研究者の旅費に用い、招聘者の人数を増やし、日本におけるシンポジウムと展示内容の充実をはかる。
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Research Products
(3 results)