2014 Fiscal Year Research-status Report
アルベール・カミュ『手帖』-オリジナル原稿の復元と新しいカミュ像の探究
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26370368
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高塚 浩由樹 日本大学, 国際関係学部, 准教授 (90297771)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カミュ / 手帖 / 草稿研究 / 生成研究 / 最初の人間 / ノート / カルネ / カイエ |
Outline of Annual Research Achievements |
カミュの『手帖』は、これまで、交通事故で亡くなった作家が遺した「客観的資料」とみなされてきた。しかし、作家の死後に出版された『手帖』には、本来の日記的な記述と、後から書き加えられた修正が、区別されることなく混在している。本研究は、修正前後の違いを明示する『手帖』の校訂版を作成しようとする試みであり、初年度である本年は、次の4点を研究の柱とした。
(1)『手帖』第1ノートにカミュが加えた修正の内容が、遺作となった小説『最初の人間』の執筆を期したものであったことを証明する仏語論文「『手帖』の修正から『最初の人間』へ」を執筆。2015年2月出版のS.バスティアン、A.プルトー、A.スピケル編『芸術家カミュ』(レンヌ大学出版局)に収録された。 (2)2014年9月3~7日に、パリ国立図書館において、『手帖』第7ノートで頻繁に言及されているトルストイ関連図書を閲覧。それぞれの書籍についてカミュが読んだ版を確認するとともに、『手帖』の記述の出典を確定した。 (3)9月9~13日に、エクサンプロヴァンス市立図書館内のアルベール・カミュ資料センターにて、『手帖』第1・第7ノートの原稿の調査を行った。特に、第7ノートの修正箇所の分析から、1957年に出版された短編小説集『追放と王国』所収の『客』の源泉が、カミュが1952年に読んだトルストイ関連図書のうちの1冊にあることを突き止めたことは、大きな収穫であった。 (4)12月20日に開催された日本カミュ研究会第59回例会にて、上記(2)と(3)の現地調査で判明した内容について、「『客』とトルストイ-カミュ『手帖』から見る『追放と王国』の形成過程」と題して研究発表を行った。その後、この発表の内容をさらに発展させた仏語論文を執筆し、2015年5月刊行予定の『カミュ研究 Etudes camusiennes』第12号への掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、2014年9月に1回、2~3月に1回の、計2回のフランスでの資料調査を予定していたが、10月に父が死去し、それまで父が面倒を見ていた母の介護をすることとなり、母の病状の悪化も伴って、2~3月に予定していた現地調査を見送らざるをえない状況に陥った。 そのため、本年度に計画していた原稿の調査のうち、9月に現地で精査することができた『手帖』第7ノートについての研究は、当初の計画以上に進捗させることができたが、『手帖』第1ノートに加えられた修正内容の確認と分析の方は、当初の計画よりも遅れ気味になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度に関しては、2回の現地調査を行うとともに、それぞれの現地調査の期間を可能なかぎり長くして、2014年度に発生した研究の遅れを取り戻し、当初の研究計画どおり、『手帖』第1ノートと第7ノートに関して、カミュによって修正が加えられる前と後の違いと明示する「校訂版」の作成を進める方針である。
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Causes of Carryover |
2014年10月に父が死去し、その後、母を介護することとなり、当初、9月および2~3月の合計2回を予定していた現地調査の実施が、9月の1回のみにとどまったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度には、2回の現地調査を実施するとともに、それぞれの現地調査の期間を可能なかぎり長くして、遅れ気味になっている研究を、当初の計画通りに進捗させる予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Book] Camus l'artiste2015
Author(s)
Sophie Bastien, Anne Prouteau, Agnes Spiquel編; 高塚浩由樹
Total Pages
334 (197-209)
Publisher
Presses Universitaires de Rennes