2014 Fiscal Year Research-status Report
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26370374
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
奥 純 関西大学, 文学部, 教授 (00152413)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロブ=グリエ / ヌーヴォーロマン / 多文化共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は3年計画の初年度であった。前回の課題「アラン・ロブ=グリエにおけるエグゾチスム(JSPS科研費22520341)」で得られた研究結果をもとに、後期作品についての初期段階の研究を行った。 すでに先に行った研究において、ロブ=グリエの後期作品の研究に進むためのアンカーとなる作品として1981年に発表された『ジン』を取り上げ、この作品にみられる特異な語りの構造を分析し、ロブ=グリエの作品の歴史的展開における意味を探究したが、本年度は、この語りの構造をフランス現代文学の流れに位置付けて分析しその歴史上の意義についての考察を進めた。具体的には、同じように複数の語り手が次々に交代しつつ物語が展開する複雑な語りの構造を持つロブ=グリエの作品の先行作品として、サルトルの『自由への道』(1945)とヌーヴォーロマンの作家たちの中でロブ=グリエと双璧を成す作家ミシェル・ビュトールの『段階』(1960)との比較を通じて、ロブ=グリエの後期作品の語りの構造とその意味についてさらに検討を加え、ロブ=グリエの作品の語りの構成の持つ意味を、現代人の世界観の変遷に関わる問題として明らかにする試みを行った。結果、そこに見られたものは、全体主義から多文化共生へと向かう道筋であると同時に、世界とそれを見る個人の意識の確固たる「実在性」に関する信念に付された大きな疑念であった。 以上の経緯について、平成26年12月20日に行われた「関西大学フランス語フランス文学会」で口頭発表を行い、この発表に資料や作品分析を加えて増補改定し「アラン・ロブ=グリエの後期作品の研究(1)― 瓦葺き状の語りの構成とその意味について -」として論文にまとめ、平成27年3月発行の『仏語仏文学』(関西大学フランス語フランス文学会発行)に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロブ=グリエの後期作品に見られる語りの構成の意味を文学史的展開の中で明らかにすることによって、後期作品群の中心となる自伝的作品3部作の意味を理解するための糸口をつかむことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で得られた知見をもとに、自伝的作品3部作の分析にとりかかり、ロブ=グリエの自伝的作品の特異性を明らかにし、その構成の持つ意味について考察を進める。また、本課題では、ロブ=グリエの作品の舞台となったイスタンブールとニューヨーク市街の現地調査を予定しているが、本年7月末から9月中旬まで、勤務先の関西大学からアメリカ合衆国ハワイ州での調査研究の機会を与えられたので、本年度はその期間中に用務を切り替えて、ニューヨーク市街の現地調査を先に行うことにする。
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Causes of Carryover |
購入したパソコンとセットになるモニターが、予想に反して発売されなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ニューヨーク市街現地調査の旅費と書籍など資料の購入費用に充てる。
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Research Products
(2 results)