2014 Fiscal Year Research-status Report
パウル・ツェラーンの抒情詩 ― 人間学と自然史のはざまに
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26370378
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 嘉彦 東京大学, 人文社会系研究科, 名誉教授 (50079109)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ツェラーン / 自然史 / 人間学 / ハイデッガー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年8月、9月には、予定どおりマールバッハ・ドイツ文学資料館において、主任司書アルノー・バルネルト博士と意見交換をおこなうかたわら、ツェラーンの詩作品と「自然史」の主題にかかわる文献、とりわけ詩人の遺したすくなからぬ蔵書を参看して、資料調査に従事した。 他方で、日本オーストリア文学会例会において、シェイクスピアの『リア王』の狂気にちなんだツェラーンの詩についての講演をおこなった。フーコーを参照しつつ、「人間」の語があらわれる謎めいた詩行のなかに、人間理性の限界をこえたあらたな「人間学」への志向を看取することをこころみた。 また、ルーマニア・ブカレスト大学ジョルジュ・グチュ教授の古希記念論集に、ツェラーンの詩「トートナウベルク」を対象とする論文を寄稿した。ハイデッガーの思想にかかわりつつ、そのナチスへの関与を暗示するこの詩のなかで、「人間学」的な志向がややもすれば「自然史」の領域へと偏倚していく、ツェラーンの詩作品の性格を浮かびあがらせることができた。 なお研究課題と直接には連関しないが、ハンス・ディーター・ツィンマーマン『マルティンとフリッツ・ハイデッガー 哲学とカーニヴァル』の日本語訳を完成し、刊行したことも付言しておいていいだろう。その訳出の過程において、ハイデッガーの思想のはらむ問題性に、なかんずく上記のツェラーンの詩作品に関係する主題に、理解を深めることができたのは、思いがけない収穫であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究計画調書」の「年次計画」にも記したように、平成26年度には、主として動物、植物の形象をもちいたツェラーンの詩作品をとりあげて、その解釈をこころみた。その成果の一端は、すでに上記の論文において公にしたが、これは、最終的に企図している著書の重要な一章をなすことになろう。 さらにツェラーンの詩作品を解釈する準拠枠として、従来の「哲学的人間学」を批判的に再検討していくなかで、その人間中心主義が破綻する局面において、「自然史」への推移を読みとろうとする意図も、マールバッハ・ドイツ文学資料館、および東京大学、京都大学の各図書館における文献調査によって、その正しさが立証されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき、海外の研究協力者との意見交換、ドイツ、オーストリアの国公立ないし大学図書館における文献資料調査を中心にして、研究をすすめていく方針である。 ただし平成27年度は、当初、ウィーン大学およびオーストリア国立図書館への出張を予定しているのみであったが、7月、8月にケルン大学への出張をおこなう必要が生じ、科研費による旅費をこれに充当する関係で、当初計画にある12月、1月のウィーン出張は、科研費の予算枠を超えることになるが、これは自己負担によって、予定どおりおこなう所存である。
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Research Products
(4 results)