2014 Fiscal Year Research-status Report
文学と絵画の比較考察による作家兼風景画家の系譜化についての研究
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26370380
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
磯崎 康太郎 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (30409502)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドイツ文学 / 美術史 / 風景画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀以降に風景画を描いたドイツ文学の作家をとりあげ、かれらの風景画相互の比較考察を試みるとともに、文学作品において風景描写として彫琢された文章表現と色彩表現との関連性から、個々の表現媒体を超えた風景というトポスの意味を明らかにするものである。そしてこの点を踏まえて、ペンと絵筆という二通りの表現手段を有した作家兼風景画家について、時代的推移とは異なるかれらの系譜化を図ることを目的としている。 平成26年度は、基礎研究として画集や研究文献から、ゲーテ、シュティフター、ケラー、ヘッセの風景画業への取り組みを概観し、かれらの人物像や風景画の検討を行った。かれらの画業への動機づけや人物像の考察に際しては、ユング『タイプ論』等の心理学的研究の成果を援用し、絵画の検討に際しては、メルロ=ポンティ等の1960年代以降の視覚論における考察を参照した。 平成26年度にとりわけ重点的に検討したゲーテとシュティフターの風景素描・風景画は、両作家が自然の動態に強く興味を惹かれ、同時代の絵画的様式の影響を受けながらも、自然の動態を独自のやり方で描き出そうと試みていたことをよく示している。両者の絵画的制作に先行する風景への没入の経験は、両作家兼画家にとって日常生活や文筆業に対する大きな癒しをもたらすとともに、主客の溶解の経験として、特定の定点からは見ることのできない風景の「裏面」を描き出す契機を与えていることが明らかになった。そしてこの風景の「裏面」は、作家らしく言語を援用して表現が模索されていることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の最大の課題として掲げていた、画集や研究文献から、ゲーテ、シュティフター、ケラー、ヘッセの風景画業への取り組みを概観するという基礎研究の目的はおおむね達成することができた。その成果としてゲーテ、シュティフターについては学術論文の形で発表することができた。ヘッセとケラーについては、順次、研究成果を発表していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、26年度の基礎研究の成果を生かしつつ、文学作品の検討に着手し、年度末には現地調査も予定しているため、時間配分に十分注意しながら研究を進めていくことを心掛けなくてはならない。また万が一、研究計画が滞った場合には、現地調査の機会を有効に活用し、チューリッヒ国立図書館、ヘッセ博物館の研究員に相談し、資料面や発想面での打開策を見出すことも推進方策として掲げたい。
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Causes of Carryover |
資料調査のために予定していた東京への一泊の出張が、日程が合わずに見合わせることになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度の予定していた東京への一泊の出張を、平成27年度に実施する予定である。
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Research Products
(1 results)