2017 Fiscal Year Annual Research Report
Mutual Influence of Science and Art in the Era of the Russian Avant-Garde
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26370387
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
Grecko Valerij 神戸大学, 国際文化学部, 非常勤講師 (50437456)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アヴァンギャルド芸術 / ロシア文学 / ユートピア / 科学と芸術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はロシア・アヴァンギャルドの時代(特に1920~1930年代)における科学と芸術の相互作用について、①具体的なモチーフのレベル、②世界観と構造的特徴のレベル、③メタ・レベルの3つのレベルで明らかにすることを目的としている。29年度の課題は、これまでの研究成果に基づいて、科学と芸術との関連においてメタ・レベルで考察するとともに、科学と芸術の相互的な影響関係について、認識論・方法論的に考察することだった。研究の成果は以下の通りである。 1)科学と芸術は人間の認識の2通りの在り方を示している。科学と芸術はそれぞれ異なる方法論を用いるが、社会の変革期においてはそれらの方法論が見直され、近似したものとなる。芸術は科学の成果を容易に取り入れ、それを土台として美的な実践を行う。一方科学は、芸術的構想を作業仮説として用いることができる。 2)ロシア革命前後の時代における科学と芸術の相互的影響関係について考える際、政治的な文脈を考慮に入れることも重要である。芸術家、特にアヴァンギャルド芸術家は、政治的なレベルで展開される新しい社会像やユートピアに敏感に反応し、その政治路線をサポートするような芸術的実践を行った。一方科学者は、革命期の構造転換によって学問上の抜本的なパラディグマ転換と制度改革に導かれた。政治は芸術をプロパガンダに利用し、イデオロギーを支えるものとして科学を利用した。 3)科学と技術の境界があいまいになり、いずれもユートピア的な特徴を帯びてイデオロギー的にも操作されるようになったことによって生じたあらゆるデメリットにもかかわらず、科学と芸術は互いに影響を及ぼし合うことによってより生産的になった。科学と芸術のフュージョンによって認識論的には非常に重要な新しい知見が生み出されたからである。
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Research Products
(8 results)