2014 Fiscal Year Research-status Report
民国期児童雑誌の研究 ──商務印書館編訳所の活動と児童表象を軸に
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26370412
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
佐々木 睦 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (20315732)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 博 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (80199033)
加部 勇一郎 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (30553044)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 児童 / 画報 / 雑誌 / 児童文学 / 児童表象 / 商務印書館 / 図像学 / 幻想文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は当初の計画通り二度の研究会(中国児童雑誌研究会)を公開形式で行った。本会は中国の児童雑誌研究を専門とする国内外を通じて初の研究会としての意義を有する。 第1回中国児童雑誌研究会/2014年8月2日/首都大学東京で開催。佐々木睦「民国期児童雑誌の概要とその研究状況」、平井博「魯迅と児童あるいは魯迅における児童」、加部勇一郎「新中国児童雑誌の概要とその研究状況」、上原かおり「民国期青少年雑誌・科学読物雑誌の概要とその研究状況」、青木美智子「東アジア地域に伝播した近代教育学とその理論―ドイツ教育思想史の観点から―」。ゲストスピーカー吉本篤子(桐朋学園大学)による講演「ドイツ世紀転換期の児童文学と批評:「傾向」と「娯楽」の問題をめぐって」。 第2回中国児童雑誌研究会/2015年3月5日/首都大学東京で開催。佐々木睦「民国期児童雑誌に見る「よい子」と「悪い子」──国語普及/新生活運動/後ろ向きの少女図像」、加部勇一郎「雑誌『児童時代』における張楽平の活動について」、上原かおり「民国期女性雑誌にみる科学化と母子」、に加え代珂(首都大学東京大学院博士課程)「「満洲国」の子供向けラジオ放送番組」。 国内外における資料調査はのべ六回で民国期の児童雑誌及び商務印書館の活動を解明する上で貴重な資料を入手した。①佐々木睦/北京/2015年3月、②加部勇一郎/2014年8月/上海、③加部勇一郎/2014年8月/東京、④上原かおり/2014年8月/上海、⑤上原かおり/2014年9月/北京、⑥上原かおり/2015年3月/北京。 これらの活動の総括として各成員が研究成果の公開を行った(研究発表の項参照)。うち研究代表者佐々木睦「民国期児童雑誌と注音字母」(『人文学報』509号、2015年6月刊行予定)は中華書局『小朋友』が国語普及・漢字改革論者たちによる児童向けプロパガンダ誌としての側面を持っていたことを明らかにしており、一定の価値を有する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が試みようとしているのは、商務印書館編訳所の児童雑誌出版活動の解明と、主要雑誌からうかがえる児童観の解読である。この問題解決のために以下の五つの下部項目を設定している。(1)児童表象の解読、(2)代表的雑誌の内容目録作成と分析、(3)編集スタッフの活動調査、(4)外国雑誌の影響調査、(5)同時期の児童教育資料との比較。各項目についてメンバーがそれぞれ調査を進め、研究会での口頭発表、刊行物上の発表につなげている。以下各項目に関して進捗状況を記す。 (1)児童表象の解読──平井が魯迅における児童、児童芸術品展覧会について調査し発表した(研究会1)、佐々木が清末から民国における児童表象を整理し、教育大綱や新生活運動との関連から調査を行った(研究会2)、(2)代表的雑誌の内容目録作成と分析──佐々木が『小朋友』における国語教育について調査、発表した(以下研究会以外は刊行物上の発表。詳細は研究発表の項参照)。加部が新中国児童雑誌について発表した(研究会1)、上原が民国期青少年雑誌・科学読物雑誌について発表した(研究会1)、(3)編集スタッフの活動調査──佐々木が『児童画報』画家胡若仏について発表した(研究会2)。また『小朋友』編集者陸費逵、黎錦暉、王人路について発表した。上原が商務印書館編集者顧均正について調査、発表した。(4)外国雑誌の影響調査──佐々木が『児童画報』『小朋友』に見られる外国雑誌の影響について発表した(研究会1)。上原が顧均正の作品に見られる外国作品の影響について調査した。(5)同時期の児童教育資料との比較──佐々木が新生活運動関連資料を調査し発表した(研究会2)。平井が児童展覧会について調査し発表した(研究会1)。上原が科学雑誌を主として調査し発表した(研究会1)。また加部が新時期児童雑誌について調査し発表した(研究会1)。
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Strategy for Future Research Activity |
一年目にあたる昨年度は商務印書館編訳所の活動を研究の中心に据えつつ、その周縁に位置するテーマ、すなわち中華書局や開明書店の児童雑誌、児童芸術品展覧会のような児童関連行事、また新教育制度や新生活運動等の展開という社会教育状況などに対する理解を深め、さらに新時期児童雑誌と対照させることによって民国期の児童観を読み解いていく作業を集中的に行った。 二年目にあたる今年度の活動として、昨年度の各自のテーマ、研究対象に対する調査・探求をより深めるとともに、研究対象を拡大し、商務印書館刊行物を中心とした児童雑誌の読み物以外のコンテンツ(懸賞、工作、識字、滑稽画等)や、児童節(子供の日)普及のためのメディア戦略も解明すべき課題に組み入れたい。また商務印書館に所属した編集員達が多く参加して創刊された新中国書局の『我的画報』についても初歩的探索を行いたい。 プロジェクト全体の活動としては二度の研究会の開催を予定している。「中国児童雑誌研究会」は本科研費による時限的研究会ではあるが、今年度も昨年度同様公開形式で行うことにより、外部の研究者との交流を積極的に図っていきたい。 また5月30日に京都国際漫画ミュージアムで行われる本研究費主催シンポジウムにて佐々木、加部が、本研究課題と関連して、民国期の児童雑誌と漫画・連環画の関わりや民国期児童雑誌編集者の新中国成立後の活動について発表予定である。 これらの活動を通じて研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金として計上していた100,000円のうち20,000円しか使用しなかったことによる。その理由は第二回研究会で予定していた講演者の都合がつかなかったこと、データ打ち込みのアルバイト雇用を予定していたが、その作業が昨年度は不要だったことである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
・年度内に二回開催を予定している研究会の講演者に対する謝金。 ・データ入力のアルバイト雇用。
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Research Products
(23 results)