2015 Fiscal Year Research-status Report
民国期児童雑誌の研究 ──商務印書館編訳所の活動と児童表象を軸に
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26370412
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
佐々木 睦 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (20315732)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 博 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (80199033)
加部 勇一郎 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (30553044)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 児童 / 画報 / 雑誌 / 児童文学 / 漫画 / 連環画 / 図像学 / 小朋友 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究会については、1度の国際シンポジウム、2度の児童雑誌研究会を行なった。2015年5月30日に開催した京都国際マンガミュージアム学術シンポジウム「〈連環画〉、そのさまざまな顔 ~他ジャンルとの接点をさぐる~」)は京都大学の貴志俊彦教授が代表をつとめる基盤研究(A)「東アジア域内100年間の紛争・協調の軌跡を非文字史料から読み解く」とともに主催したものである。 第3回中国児童雑誌研究会「交錯するまなざし」/2015年8月1日/首都大学東京。佐々木睦「海を渡ったのらくろ ──20~30年代児童・少年雑誌に見る日中漫画交流」、加部勇一郎「『児童時代』における異国表象」、米井由美(首都大学東京大学院博士課程)「民国期女性雑誌と日本」に加え、鳥谷まゆみ(立命館大学衣笠総合研究機構)によるゲストスピーカー講演「民国期の小品文について ──青少年教育から文章愛好青年の創出へ」 第4回中国児童雑誌研究会「〈書き換え〉のたくらみ」/2016年3月4日/首都大学東京。佐々木睦「民国期児童雑誌『小朋友』の日本漫画受容」、平井博「ルビッチ『ウィンダミア夫人の扇』と洪深「『少奶奶的扇子』 ──中国早期サイレント映画管見」、加部勇一郎「戴鉄郎のマンガ『黒猫警長』について」、上原かおり「『三体』三部作から『三体X』へ ──登場人物像の〈描き換え〉から考える」。 国内外での資料調査はのべ6回、研究課題解明のための貴重な資料を多数入手した。 メンバーによる研究発表は著作が6点、口頭発表が13。うち研究代表者・佐々木睦「海を渡ったのらくろ ──民国期児童雑誌における日本漫画の受容」は民国期の児童雑誌に戦前の講談社の漫画が多数輸入されていることを初めて指摘したもので、従来戦後のものと考えられていた日本漫画の中国雑誌への掲載が大正時代にさかのぼれることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度末の報告書の「今後の研究の推進方策等」にて提示した今年度の研究計画はほぼ達成された。一度のシンポジウム、二度の研究会は順調に行なわれ、特に京都国際マンガミュージアムで開催したシンポジウムは他の科研費研究グループの活動ともリンクしていて、国内外から関連部門の研究者が集まり、最先端の研究交流が行なわれたことで大いなる成果を得た(「研究実績の概要」参照)。 一年目は、研究テーマ解明のための基礎資料の整理と社会教育状況についての理解に重点を置き、二年目にあたる今年度は海外からの影響と「書き換え」を一つの重要な項目として、児童雑誌の読み物以外のコンテンツ、同時代の他のメディアなど周辺の状況などについても注目し、研究会とも連動させて考究につとめた。 研究代表者佐々木は児童雑誌の故事画、滑稽画など、現在の漫画・連環画に相当するコーナー、研究分担者平井は同時代のサイレント映画に見られるアメリカ映画の影響、研究分担者加部は児童雑誌に見られる異国表象、研究協力者上原は民国期SF小説のアメリカ作品受容にそれぞれ注目して、大きな収穫を得、それぞれの研究成果を著作あるいは口頭で発表した(「研究発表」の項参照)。 研究対象である商務印書館編訳所のスタッフについては萬籟鳴、顧均正等数名について理解が進んだが、金少梅、韓佑之等『児童画報』の初期の絵画担当者についてはいまだ不明な点が多く、来年度への課題として持ち越された 一方で、今年度は商務印書館のライバルと位置づけられる中華書局と、その児童雑誌『小朋友』についての研究が進展し、それによって逆に商務印書館および『児童画報』『児童世界』との差異(特に日本の児童雑誌からの影響、スタッフの政治活動への関与について)が明確になるという望外の収穫を得た。ゆえに「おおむね順調に進展している」という自己評価を下した。
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Strategy for Future Research Activity |
三年目が最終年度となることから、本研究の総括を行いつつ、次のステップの準備を進めていきたい。 本研究の二つの大きな柱は「商務印書館編訳所の児童雑誌出版活動の解明」と「主要雑誌からうかがえる児童観の解読」で、この問題解決のために設定した五つの下部項目(1.児童表象の解読、2.代表的雑誌の内容目録作成と分析、3.編集スタッフの活動調査、4.外国雑誌の影響調査、5.同時期の児童教育資料との比較)に従いながら研究を進めていく。特に「3.編集スタッフの活動調査」は前年度からの持ち越しの課題であり、重点的に調査を進めたい。より具体的には絵画担当であった金少梅、韓佑之、萬籟鳴や科学普及記事を書いた顧均正の商務印書館在籍時の活動について、『良友』、『我的画報』等周辺の刊行物も資料に含めて検討し、北京国家図書館、上海図書館、上海社会科学院等でメンバーそれぞれが調査を行う予定である。 プロジェクト全体の活動としては二度の児童雑誌研究会(公開)の開催を予定している(8月、3月)。また、8月26日、27日に上海の社会科学院で開催される、上海社会科学院と「上海蘭心大戯院研究会」(科研費基盤(B)研究グループ。代表:関西学院大学大橋毅彦教授)との共催で行われる「ライシャム劇場150周年記念国際シンポジウム」に、研究代表者佐々木と研究分担者加部が招待されて発表をすることになっており、ここでの発表が研究の総括の一つとなるであろう。このシンポジウムは今年度同様他の研究グループの活動とのリンクであり、これらの活動を通じて、研究の輪を広げていくことも期待される。 2017年3月に予定している通算第6回目の中国児童雑誌研究会をもって本予算の活動を終えることになるが、研究会組織は解散せずに次のプロジェクトにつなげ、公開研究会、研究誌の発行等を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
・物品費として100,000円を計上していたが、文房具類は初年度の購入分でまかなえたため、26,956円しか使用しなかった。 ・旅費を上手に節約することができた。 以上二点が次年度使用額が生じた主たる理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
・年度内に二回開催を予定している研究会の講演者に対する謝金。 ・研究成果の中国語による公開のための翻訳アルバイトの雇用。
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Research Products
(20 results)
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[Presentation] 社会の中の子ども2015
Author(s)
青木美智子
Organizer
草津市立幼稚園協会研修会
Place of Presentation
草津市立中央幼稚園(滋賀県草津市)
Year and Date
2015-08-05
Invited
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