2014 Fiscal Year Research-status Report
浙江金華口承文藝研究 ―語りもの藝能「金華道情」を中心に―
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26370418
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
松家 裕子 追手門学院大学, 国際教養学部, 教授 (20215396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯部 祐子 富山大学, 人文学部, 教授 (00161696)
小南 一郎 公益財団法人泉屋博古館, その他部局等, その他 (50027554)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 道情 / 金華 / 浙江 / 口承文芸 / 唱導文芸 / 語りもの芸能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のメンバーは、平成20~22年度および平成23~25年度、科学研究費の支給を受けて、中国江南地区のうち浙江省沿海地区、とりわけ紹興において、「宝巻」および「紹興宣巻」(宣巻は歌と語りによる宗教的な儀礼であり芸能、宝巻はそのテキストをいう)を主な対象として、実地調査を含む研究を行ってきた(以下「前研究」と呼ぶ)。本研究は、前研究対象である宝巻や紹興宣巻を比較の対象と位置づけ、同じ浙江省の内陸部、金華に調査地点を移し、現地の歌と語りによる芸能「金華道情」を主たる対象として、実地調査と文献調査を行い、中国の口承文藝ひいては文学史についての研究に新局面を開こうとするものである。 平成26年度に公表した成果は、松家『太平宝巻』論文、小南『仏説大目連經』校勘訳注、磯部『花名宝巻』論文など、むしろ前研究のまとめとして、宝巻や紹興宣巻にかかわるものが中心になった。また、これにともない実地調査も紹興において行うことになって、金華に赴くことができなかった。しかし、松家は10月に中国揚州で開催された「中国宝巻国際研討会」に参加し、宝巻はもちろん中国の口承文藝について見聞を広めた。また、文献調査については、道情のテキストや金華に関連する地方文献を収集し、成果を公表するにはいたらなかったものの、磯部の金華道情の翻訳作業をはじめ、メンバー個々に閲読の作業を行って、平成27年度以降の金華における実地調査の準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記「研究実績の概要」にも記したように、平成26年度は、10月に中国揚州で「中国宝巻国際研討会」が開催されたこともあり、むしろ本研究では比較の対象である「宝巻」と「紹興宣巻」の成果のまとめに追われるかたちとなった。そのため、実地調査も紹興で行ない、金華におけるメンバー共同の実地調査は、日程的にも見送らざるを得なかった。「やや遅れている」としたのはこのためである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には、金華においてメンバー共同の実地調査を行う。これまでに金華で2回調査を行った経験に照らせば、1回調査に赴くだけでも、研究が大きく進展する可能性が十分にある。実地調査を実り多きものにするために、磯部と松家は「金華道情」の翻訳作業を進める。また、周辺領域である金華の伝統地方劇、ブ劇や金華の民間伝承にかかわる資料、および金華の地方志をはじめとする社会史関連の資料を収集して閲読を行う。小南は、自身の文献研究の豊富な成果を踏まえ、時間や地域のスパンを広くとって、現代の金華に限定されない、「道情」全体について調査・分析を行う。2年目となる平成27年度は、こうした文献調査と実地調査を蓄積することによって、3年目の研究の集大成に備える。
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Causes of Carryover |
本研究では、毎年2回、中国においてメンバーおよび日本側研究協力者による共同の実地調査を行う予定にしているが、諸般の事情により、平成26年度はこれが1回にとどまった。また、8月に松家が文献調査のため中国へ赴いたが、これは別の研究の調査も兼ねていたため、本科研費から支出をしなかった。すなわち、海外渡航費の支出が計画よりも少なくなったことが、次年度使用額が生じた最大の理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、上記「理由」に示したように、金華におけるメンバー共同の実地調査を行わなかった結果生じたものであるから、平成27年度、金華における実地調査のために使用する予定である。また、可能であれば、次年度使用額が生じなければできなかったであろう、高額のまとまった図書やデータの購入も検討したい。さらに、調査における音像の撮影・録画・録音や調査後のデータの処理・提示に必要な機材を新たに購入する可能性もある。
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