2015 Fiscal Year Research-status Report
言語発達遅滞の症例分析に基づく文法能力獲得の実証的研究
Project/Area Number |
26370452
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高井 岩生 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 研究員 (30437751)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発達遅滞児 / 項構造 / 文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度より,科学研究費助成基金基盤研究C(課題番号26370452)の支援を受けて,「発達遅滞児の症例分析に基づく文法能力獲得の実証的研究」を行っている.この研究には,理論的な研究と実証的な研究の2つの側面がある.これまでの研究で、理論的な進展に関しては、動詞の項構造が改変するという可能性があることを明らかにした.これを認めると、発達遅滞児の獲得にも大きな影響が生じる.発達遅滞児は、項構造の内容を一度に獲得する必要はなく、段階を経て、徐々に獲得していくという可能性がある.これに基づくと、発達遅滞児の言語能力の程度を調べる場合にも、獲得しているか未獲得かの2段階ではなく、いくつかの段階を認めてもよいことになる.それぞれの段階における項構造がどのようなものであるのかを特徴付けることができれば.遅滞児がどの段階にいるかを判断できるようになる.次に、実証的な進展についてであるが、遅滞児に対する検査をするためには、動詞項目が必要である。そのためには、まず、検査に必要な各動詞の特性を記述しなければならない.この記述の仕方を考案した.各動詞とも(i) 動作の対象物,(ii) 動作の様態,(iii) 対象物の変化,の3つの点に基づいて特性を記述し、動詞のリスト作りを進めている.現時点では、100語から200語弱のリストを作成する予定である.この作業と並行して,遅滞児への刺激の与え方を言語聴覚士と作成中である.具体的には、(i) 視覚刺激,(ii) 聴覚刺激の2つを基本として,五感に訴えかける手法を考えている.また,こちらの刺激提示の仕方に遅滞児を合わせることは難しいので,同じ視覚刺激でも,イラストを使った動画,聴覚士の実際の動き,人形を使った提示,などいくつかのバリエーションを作ろうと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、理論的な面では、項構造の獲得には段階があるという予測のもと、それが具体的にどのような段階があるのか明らかにすることを目的としている。実証的な面では、発達遅滞児が動詞の概念をどの程度まで獲得しているのかということを観察することで、彼らがどこまで項構造を獲得しているのかということが測れるような検査手法を確立することを目的としている。これまでも、同様の着眼点から研究が行われているが、目立った成果は得られていない。本研究では、一昨年度、昨年度の2年間に渡る理論研究を経て、それは項構造が一度に獲得されるという前提に立っているからであるとの結論に達した。理論研究で、明らかにしたように、項構造の内容は文構築において改変され得るものである。ということは、項構造は全一のものではなく、部分に分節できるように構造化されているものだという可能性がある。昨年度は、動詞の概念を3つのに分け、記述するという手法を考案した。そして、概念の各構成要素は、項構造の各構成要素に対応するという仮説を立てた。現時点では、動詞の概念の各構成要素を理解しているかどうかを調べるために、言語聴覚士と共同で、刺激提示の仕方とその反応の評価手法を作成中である。以上のことから、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
5月から,大宰府にある「すみれ園」の協力を得て,実際の検査を行う(検査対象になる幼児、並びに検査者の選定は既に終了している。検査者は、今村亜子氏、すみれ園の先生方(3名から5名程度)、言語聴覚士の灘吉xx氏、山本xx氏である。一月に数回の検査を行い、フィードバックを得て、検査手法の修正を図る。この検証は,12月まで行うことを予定している.5月以降の調査結果を待って,次の学会に論文投稿または口頭発表の応募をする予定である。論文投稿:日本コミュニケーション障害学会(6月までに投稿予定),日本言語聴覚士学会(8月までに投稿予定)、口頭発表応募:Japanese/Korean conference of Linguistics(日本開催)、日本言語学会秋季大会(福岡大学)。またこれと平行して、ウェブサイトを作成する予定である。ウェブサイトでは、動詞200語のリストと、各動詞を獲得しているかどうかを確認するために必要な動詞の特性を記述したものと,それらを幼児に提示するときの提示の仕方を実演したものを公開するつもりである。(9月までにアップ予定)。
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Causes of Carryover |
今年度は理論的な整備を行った上で,臨床の現場で利用できるような検査手法を確立することを目標としていた.検査手法が確立できた後は,それをマニュアル化し,今年度中に製本することを予定していた.ところが,検査手法の確立のためのプレ検査の段階で,想定していた以上の数の幼児・言語聴覚士の協力が得られたため,幼児に対する刺激の与え方,幼児の反応の評価の仕方に関するデータが数多く集まった.当初は,検査手法を1つ確立することを目指していたが,予想以上のデータが集まったので,数種類の検査手法をつくることが可能になった.さらに,現場の言語聴覚士からも,幼児に対する刺激の与え方にもっとバリエーションがあればよいという声やウェブ上に載せてあると使いやすいという声をもらった.そこで,計画を多少変更し,言語聴覚士からのリクエストに基づいて,ウェブ上で利用できるような形に作成し,その後公開することにした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画通りのものとしては、「理論の整備(項構造の獲得):国外の研究者3名との共同研究」、「動詞のリスト作成,検査手法の確立:国内の研究者4名との共同作業」を行う。これに加えて、新たに「動画,アニメーション,聴覚刺激の作成:それぞれの専門家を雇用する」、「動詞リストの増補:日本語教師3名から5名を雇用する」という2つを計画に加える。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] 3項動詞の受身化可能性2015
Author(s)
高井岩生
Organizer
2015年度台湾日語文学国際学術研討会
Place of Presentation
輔仁大學
Year and Date
2015-12-19 – 2015-12-19
Int'l Joint Research
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[Presentation] 日本語の受動文2015
Author(s)
高井岩生、林下淳一
Organizer
日本言語学会第151 回大会
Place of Presentation
名古屋大学
Year and Date
2015-11-28 – 2015-11-29