2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370456
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
白石 英才 札幌学院大学, 経済学部, 准教授 (10405631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水島 未記 北海道開拓記念館, その他部局等, 研究員 (70270585)
丹菊 逸治 北海道大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80397009)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(オランダ、フィンランド) / 国際情報交換(ロシア) / ニヴフ語 / アクセント / フィールドワーク / 音声データベース / サハリン / アムール川下流域 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクト1年目として特に力を入れたのは1)国内外の研究者とのネットワーク構築および2)現地調査の足場固めである。1)については5月にヘルシンキ大学(フィンランド)ならびにライデン大学(オランダ)に赴き、共同研究者と今後の研究の進め方について協議した。特にライデン大学では共同研究者Bert Botma氏との共著論文(2014年『Phonology』掲載)について綿密な打ち合わせを行った。8月にはヘルシンキ大学のニヴフ語研究者Ekaterina Gruzdeva氏を札幌学院大学に招へいし、調査研究会を開催した。9月にはフリースランドアカデミー(オランダ)からTjeerd de Graaf氏を招へいし、氏が理事を務めるユネスコの先住民族言語部会の言語保持および言語記録への取り組みについて調査研究会を開催した。 予定通り2015年2月にロシア連邦サハリン州に現地調査に赴いた。調査地点はネクラソフカおよびノグリキの2か所とした。ノグリキでの調査はおよそ4年ぶりのことであり、現地の郷土博物館学芸員のアリョーナ・カヴォスク氏に依頼してニヴフ語話者を紹介してもらった。紹介された4名全員を対象に調査票(アクセント、母音フォルマント計測用)に基づいた調査を行った。またそのうちの1名から特に集中的に音声録音を採ることにし、二日目に別個面接調査を実施した。 なお研究分担者の水島未記氏と丹菊逸治氏とは2014年9月にロシア連邦ハバロフスク管区ニコラエフスク地区に現地調査に赴いている。 収集した資料のデータベース化にあたっては1)研究成果を国外にも発信すること、また2)共同研究者、現地ニヴフ人コミュニティ構成員および現地コーディネーターに日本語を解さない者が多いことに配慮し、日本語のみならずロシア語と英語も積極的に用いることを当初から予定していた。そのための外国語校閲費用を計上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は現地調査によりニヴフ語話者から言語データ(とりわけ音声資料)を採録することを主たる研究の方法としている。しかしながら本プロジェクトの採択後、国際情勢の急激な変化、具体的にはウクライナ紛争およびそれに対する日本政府のロシア制裁発動により日ロ関係は急速に冷え込んだ。さらに石油価格の暴落によりロシア経済は大打撃を受け、ロシア社会は大きな混乱の中にある。こうした調査環境の悪化を受け、一時は現地調査を実施することに危惧を抱いたが、幸いなことにほぼ当初予定どおりに調査を実施することができた。逆に現地ではこうした困難な国際情勢下でも現地に赴いて調査・研究を実施したことに対して多大な謝意を示された。 ロシアの孤立と混乱は残念ながら解消の見通しが立っていない。2015年度も現地調査を実施する予定であるので、現地情勢には細心の注意を払いながら予定された調査スケジュールを確実にこなせるよう準備・努力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度も当初計画通り現地調査を行う。9月にロシア連邦ハバロフスク管区ニコラエフスク地区およびサハリン州ネクラソフカ、2016年2月にサハリン州ネクラソフカおよびノグリキを調査する。 データベース作成は継続し、その成果を順次申請者のウェブサイトにアップロードする(http://ext-web.edu.sgu.ac.jp/hidetos/indexjapans.htm) 研究成果の発表の場として現在(2015年5月)段階で確定しているのは第23回マンチェスター音韻論学会(5月、マンチェスター大学)、Globalising Sociolinguistics(6月、ライデン大学)、北東アジア言語にかんする研究会(8月、北海道大学)である。 このほか今年度からスタートする東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の共同研究「アジア言語地理学」とも連携しながら作業を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
主たる要因として旅費が当初予定どおり支出されなかったことがある。予定していた現地調査は行ったものの、ロシアをめぐる国際情勢の急変(ウクライナ紛争とそれに対する対露制裁発動)およびに原油安に起因する急激なルーブル安の進行により、科研費申請時の2013年11月時点からルーブルが対米ドルで50パーセント近く下落した(円に対してもほぼ同様)。これはつまりこれまで1泊1万円かかっていたホテル代が実質5,000円になることを意味する。現地での交通費などルーブル建ての支出はすべて半額になったと見ていい。 原油に大きく依存するロシア経済が回復する見通しは立っていない。ウクライナ問題も解決の糸口が見えず、制裁が解除される見通しはない。ルーブル安は今後もしばらく続くものと予想している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地調査は当初予定どおり年2回実施する。想定外のルーブル安により調査旅費が大幅に圧縮されたとはいえ、急に調査の回数を増やすことは申請者の現在の職責を考えると不可能である。ただ調査の期間を長くすること、調査対象者を増やすことは検討したい。 また海外連携研究者との協同作業を円滑に進めるため、日本に招へいすることも検討したい。
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Research Products
(9 results)