2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370456
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
白石 英才 札幌学院大学, 経済学部, 准教授 (10405631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水島 未記 北海道博物館, その他部局等, 研究員 (70270585)
丹菊 逸治 北海道大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80397009)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 現地調査 / アクセント / 母音フォルマント / シュミット方言 / 言語地図 |
Outline of Annual Research Achievements |
9月8日から9月22日にかけて、ロシア連邦ハバロフスク管区およびサハリン州にて現地調査を行った。ハバロフスク管区においてはハバロフスク市内で1名、ニコラエフスクで4名、チリャーで1名、またサハリン州のおいてはネクラソフカで1名の話者と面会、集中的に調査した。調査項目は前年度に引き続き、2音節語根における各母音フォルマントおよびアクセントの計測を目的とした調査票に基づく。前年度に引き続いて調査できた被調査者には、前回調査の漏れあるいは補足の聞き取りを実施することができた。 またネクラソフカにおいては、シュミット方言の話者から集中的に聞き取りを行い、単語レベルのみならず、まとまったテキスト、特に会話資料を収集することができた。シュミット方言は北部方言とも呼ばれ、話者数が少ないニヴフ語においても特に話者数が少ない方言である(推定で5名)。この方言の記述は非常に少なく、またテキストが出版されたことはこれまで一度もない。今回の資料はさっそく音声付で『ニヴフ語音声資料12 ナデジュダ グリゴリエヴナ・ベソノヴァ』として音声CD付で公刊したが、これは画期的であった(WEBでも同時公開)。話者のベソノヴァ氏はシュミット方言の研究が進むことを願って、長らく研究者に協力を求めていた。今回、ベソノヴァ氏のそうした要望にわずかながらでも応えることができたことは喜ばしく、今後の研究活動の継続の観点からも望ましい。言語学者の地道な努力が被調査者および現地コミュニティにその成果・意義を認められた瞬間を実感できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定どおり、現地調査は最低年1回のペースで実施している。同一話者に繰り返し面会して調査できることも増え、お互いの信頼関係のもとに情報を提供してもらう関係を築くことに成功している。また話者の言語的傾向・特性(例えば植物・地名など得意とする分野)を把握できてきたため、調査の効率も上がっている。何名かの話者は亡くなられたが、比較的若い方が被調査者に名乗りをあげてくださっている。 調査の副産物としてではあるが、現地コミュニティのニーズの把握にも努めている。例えばロシアの地方都市では入手しにくい書籍、文献のコピーなどを依頼されることがあるが、コミュニティと良好な関係を維持するためにもそうしたニーズには可能な限り応えていきたい。また本プロジェクトの成果も、学術上の意義はもちろん、そうした現地コミュニティに資するものとするにはどのような形式が望ましいか、ロシア側連携協力者と検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けては、成果のとりまとめおよびその公開・発表に時間を割く予定なので、調査はこれまでの調査の漏れに限定したい。言語地図およびデータベースの作成には早々に取り組む。また発表の場としては、現在のところサハリン州ユジノ・サハリンスクおよびアレクサンドロフスク・サハリンスキーで9月に予定されている国際学会において研究発表の予定である。ここには現地のコミュニティの代表も参加予定なので、研究成果の現地還元の観点からも、本プロジェクトの成果を発表する場としてふさわしいと考える。 また英語による成果発表の場として、伝統的にシベリア研究が盛んなヨーロッパ(英国もしくはドイツ、オランダ)の学会、また日本国内で開催される国際学会に絞って実施していきたい。
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Causes of Carryover |
研究分担者である水島未記氏の勤務先である北海道博物館は昨年度、それまでの北海道開拓記念館から大幅な改組を経験し、水島氏は同館の展示課長として多忙を極めたため予定していた執行額を執行するに至らなかった。 今年度は改組も終了したため、昨年度分も合わせてほぼ当初計画に近い形で執行できる予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ニヴフ語動物・植物名称データベースの構築のための資料収集を国内で実施する予定である。そのための旅費を執行する。 さらにデータベース構築のために必要となるアルバイトを雇用するための人件費を執行する予定である。
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Research Products
(11 results)