2016 Fiscal Year Annual Research Report
Linguistic atlas of Sakhalin and Amur region
Project/Area Number |
26370456
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
白石 英才 札幌学院大学, 経済学部, 教授 (10405631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水島 未記 北海道博物館, 研究部, 学芸員 (70270585)
丹菊 逸治 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 准教授 (80397009)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 基礎語彙 / アクセント分析 / 言語地図 / シュミット方言 / 母音調和 / 舌根調和 / 動植物語彙 / ニヴフ語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトの最大の目的であった、存命のニヴフ語話者に面会し音声データを直接得ることは概ね達成できた。この間、フィールドワークをロシア極東ハバロフスク管区およびサハリン州の複数地点で実施した(ハバロフスク、ニコラエフスク・ナ・アムーレ、アレーエフカ、チリャー、ネクラソフカ、オハ、ノグリキ)。調査した話者は20名近くにのぼった。収集したデータは多岐にわたるが、当初予定していた1) 基礎語彙、2) 2音節語のアクセント分布、3) 動植物語彙については各地で集中的に採録し、均質なデータが得られた。それに加え、いくつかの方言については発話資料を集中的に採録できた。 一方、その副産物としてこれまでほとんど調査・記録されてこなかったシュミット方言の音声データを2名の話者から採録することに成功した。その音声分析は今後の研究を俟ちたいが、特筆すべき成果として口蓋垂音―uの連続を含む語根をいくつか採録したことがある。ニヴフ語他方言においてこれは存在しない音連続である(一般的には軟口蓋音―u)。シュミット方言という辺境方言に、このように他方言に見られない音連続が認められることはニヴフ語母音体系の歴史的発展過程を考える上で非常に興味深い。現代ニヴフ語の母音調和はストレス依拠高さ調和として知られるが、仮に口蓋垂音―uが有効な音連続として認められた場合、歴史的前段階として舌根調和が存在した可能性があるためである。 舌根調和から高さ調和と言う母音調和の発展過程は隣接するツングース満州諸語において観察される(例えば満州文語から現代満州語三家子方言への発展過程)。舌根調和はほぼ東アジア全域で(かつて)支配的と考えられており、ニヴフ語にもその可能性があるとなると東アジア地域諸言語の母音体系の研究に与える影響は少なくない。実際、今回の成果を国内外のいくつかの研究会や学会で報告した限りでは非常に大きな反響を得た。
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Research Products
(13 results)