2014 Fiscal Year Research-status Report
言語・コミュニケーションにおける場の理論の発展~近代社会の問題解決を目指して
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26370461
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大塚 正之 早稲田大学, 法学学術院, その他(招聘研究員) (40554051)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井出 祥子 日本女子大学, 文学部, 客員研究員 (60060662)
岡 智之 東京学芸大学, 留学生センター, 教授 (90401447)
櫻井 千佳子 武蔵野大学, 環境学部, 准教授 (30386502)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 場の理論 / 場の言語学 / 主客非分離 / 場内在的 / 場外在的 / 国際研究者交流(米国) |
Outline of Annual Research Achievements |
場の言語・コミュニケーション研究会を月1回のペースで開催した。日本語と欧米の言語とを比較すると、場に内在的な言語と場に外在的な言語という区分けが可能であり、日本語と欧米語との基本的な違いは、場の内部で構成される言語と場の外部で構成される言語との差異として位置付けることができる。これを明確にするため、関連研究の検討作業を行ってきた。その内容は「場の言語・コミュニケーション学構築への一考察:英語教育と日本語教育への貢献」(井出・櫻井分担者5月第6回)、「日本人の問いかけ発話に見られる役割の認識と「場」―日英語の対照を通して」(植野貴志子6月第7回)、「場の言語学からみる「の」名詞化節―主要部内在関係と補文を中心に―」(城野大輔9月第8回)、「計量的医療談話分析(RIAS)の批判的検討相互行為的談話分析による考察」(植田栄子10月第9回)、「日本語の深層―<話者のイマ・ココ>を生きることば」(熊倉千之12月第10回)、「場の作用の研究方法について」(河野連携協力者1月第11回)、「心の事象の開示と受取:日英語会話比較研究からの一考察」野村佑子2月第12回)、「場の理論に基づく他称詞の分析―親族の事例より―」(小森由里3月第13回)である。これらの報告から、日本語と英語の差異は、場の理論に基づき解明できる見通しが得られた。日本語は、あいまいで、主語がはっきりせず、非論理的で主観的な言語だと、否定的ニュアンスで語られてきたが、実は、日本語は場の内部に密着した言語であり、非言語的なコミュニケーションと相まって臨場感のある豊かな表現を可能にする言語であり、あいまいな主観的な言語ではないこと、非論理的でもないことがさらに明らかになってきた。そこから日本語と英語の相互変換時の注意点も明らかにする見通しを立てることができた。2015年度は、その点についても具体的に明らかにしていきたいと思う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
場の言語学の基礎研究を踏まえて、今回の発展的研究においては、場の理論の観点から、日本語の特徴を明らかにし、日本人の英語学習、外国人の日本語学習にも役に立つ言語理論を構築することを目指している。本年度は、このことに関連する多くの実証的研究を行っている研究者を研究会に招き、その研究成果を発表していただくとともに、場の理論の観点から質疑応答を行うことにより、いずれの実証的研究も、場の視点から矛盾なく説明ができるとともに、欧米の理論的枠組みでは説明できないような事実も、場の理論から相当程度説明が可能であることが明らかになった。これにより、場の言語学の内容がより豊かになり、今後の外国人に対する日本語教育や日本人に対する英語教育に役立つ学習方法を提供するための基礎資料の蓄積もかなり進めることができたと考えられる。 また、言語の生成が場を基盤として行われるとすれば、何故、日本語のような場に内在的な言語と英語のような場に外在的な言語とが存在するのかについても、場の理論の観点から明らかにすることが必要である。この点については、場にもともと内在していた言語が、場を超えて使用することを要求するような社会的な必要性に基づいて、次第に外在化していったのではないかと推測されるところ、この点についても、その基礎資料の収集を進めることができた。今後は、さらに資料の収集を行いながら、これを整理する作業を行い、そこから言語の多様性を生み出す一般理論を考えていきたいと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、2014年度までの研究を踏まえて、これを整理し、日本認知言語学会、日本言語学会などにおいて、研究発表を実施するとともに、これまでの研究を書籍の形で、一般市民に報告し、場の言語学の方法を広めるとともに、場の言語学に立脚した研究者を集め、さらに幅広い研究を実施できるようにしていきたいと考えている。 また、海外研究者とも連携を強め、日本における場の視点を基盤とする場の言語学の方法論を世界へと広めて行きたいと思う。
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Causes of Carryover |
2014年度は、場の言語・コミュニケーション研究会を頻繁に開催し、その中で、多くの研究者に自身の研究成果を発表していただき、その内容について、場の言語学の観点から、さらに深い議論を重ねることを中心に研究活動を行ったこと、多くの研究者に場の言語学に共感していただき、無償で研究発表をしていただいたこと、その結果として、予定よりも少ない支出で終えることが出来た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、2014年度の研究の蓄積を整理し、日本認知言語学会をはじめ、いろいろな機会を捉えて場の言語学の研究成果を発表したいと考えている。また、現在、場の言語学の研究成果の一部を書籍にして、一般市民に向けて発表することを計画している。次年度使用額については、主にこれらの経費に充当したいと考えている。
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