2015 Fiscal Year Research-status Report
自然災害発生時の避難勧告・指示文の分類と言語学的分析
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26370490
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Research Institution | The University of Aizu |
Principal Investigator |
小笠原 奈保美 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (50630696)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Heo Younghyon 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (10631476)
Ginsburg Jason 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (80571778)
D.B Anna 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (90631474) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水害・土砂災害避難伝達文 / 災害コミュニケーション / 言語学 / 音声知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は水害・土砂災害避難伝達文(56自治体より収集)の言語学的分析を行った。分析は、言語量(避難伝達文に含まれる文と文節の数)、構文の複雑さ、伝達文に含まれる情報の種類について行った。調査の結果、緊急性の度合い(避難準備・勧告・指示)に関わらず、平均5文で構成されている。また、平均文節数は30~34で、津波避難伝達文(平均文節数20~25)と比較すると、こちらも多くなっていた。構文の複雑さについては、以下の点が明らかになった。1)受動態の数が少ない。2)準備文から勧告文・指示文と緊急性が高くなるほど重文・複文の平均数が増加し、構文の複雑性が増す。3)津波と比較すると、構文的により複雑な文を多く使う。含まれる情報に関しては、津波避難伝達文同様、ほとんどの自治体が発信者として名乗り、避難するべき地域を特定する表現を使っている。また、津波避難伝達文と異なり、気象庁発表の「大雨警報」などの言葉はあまり使われず、自治体発令の「準備・勧告・指示」という言葉で緊急性を示す自治体が多い。また、命令調の表現が見られた自治体は6にとどまり、「~してください」という依頼の表現が多い。上記の分析に加え、伝達文を読み上げる際の音響的特性(声の性別・ピッチ・速度)が聞き手の心的印象にどのように影響を与えるかについて、音声知覚実験を行った。100名の被験者に音響特性変数を変えた複数パターンの短い呼びかけ文を聞かせ、聞き取りやすさ、信頼性、緊急性について1~5段階で評価をしてもらった。結果、1)女声のほうがやや信頼性や緊急性を高める2)スピードがゆっくりだと聞き取りやすさ・信頼性・緊急性のいずれも低下。スピードが速くても聞き取りやすさ,信頼性は低下する一方,緊急性は高まる3)ピッチが低いと聞き取りやすさ・信頼性・緊急性のいずれも低下。高くても聞き取りやすさ・信頼性は低下するということがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
津波避難伝達文は昨年度分析が終了しており、今年度はその結果をInternational Conference on Information and Communication Technologies for Disaster Managementで口頭発表を行い、論文を学会紀要に掲載することができた。土砂災害避難伝達文も分析が終了したので、結果をまとめて論文にし、海外または国内の学術雑誌に投稿する予定である。また、伝達文の知覚に関して、読み手の声の音響特性変数が与える影響を調べるために知覚実験も行い、データ収集・統計分析が概ね終了している。こちらの結果は、アメリカ音響学会で発表する予定である。取得したデータを一般に公開するためのウェブサイトの作成が技術的な問題で遅れているので、こちらを解決して、公開できるよう引き続き準備を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、知覚実験の結果を更に詳しく分析し、論文にまとめ、学術雑誌に投稿する。津波と土砂災害避難伝達文の分析で明らかになった点を踏まえ、聞き手にとってどのような情報が含まれているべきか、どのような構文を使った表現が効果的なのかなどを調べるため、ウェブアンケートを行う。昨年度は、パイロットスタディとして小規模(50名程度)のアンケートを行ったが、今年度は民間調査会社のサービスを利用して、大規模に行っていく。また、ウェブサイト公開もできるように準備していく。
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Causes of Carryover |
今年度は、使用額が当初予定より大幅に少なかった。その理由は、研究代表者の所属研究機関が来年度から変更になることがわかっていたため、備品購入を先送りにしたからである。また、研究代表者の異動に伴い、すでに購入済みの防音室を新しい赴任先に移動するための防音室解体・移動・設置費用が来年度に必要になるため、今年度の支出を意図的に抑えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、研究の最終年であるため、27年度からの繰越金1,050,000円と28年度請求額400,000円合わせて1,450,000円全額執行を予定している。内訳は、研究分担者2名のうち、1名(ジェイソン・ギンズバーグ)に27年度からの繰り越し金70,000 円、残り1名(ヨンヒョン・ホウ)に250,000円、研究代表者に1,130,000円である。研究代表者の予算で、防音室の移動費、学会出席のための旅費、データ保管・分析用のコンピュータと統計用ソフトを購入する。研究分担者の予算は、学会出席のための旅費に充てられる。
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Research Products
(2 results)