2015 Fiscal Year Research-status Report
失語症・意味認知症者の文理解・産生の障害メカニズムー意味、文法、音韻処理の役割ー
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26370493
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
渡辺 真澄 県立広島大学, 保健福祉学部, 准教授 (60285971)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 動詞活用 / 自他対応動詞 / 文産生 / 文理解 / 失語症 / 絵・単語干渉課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、失文法や音韻障害のある失語症患者と、意味記憶障害のある意味認知症患者を対象に、文理解・産生における意味、文法、音韻処理の役割を明らかにすることを目的とする。平成27年度は、以下の①~③を行った。 ①動詞活用課題:若年健常者26人を対象に、漢字または平仮名で呈示した実在動詞と、新造動詞各40語について過去形・ます形の産生課題を実施したが、即時産生と遅延産生を行い、反応潜時の差を活用潜時とした。動詞の活用型(5段活用か否か)は語末モーラの子音とその前の母音で決まり、母音≠/i, e/、かつ子音≠/r/ なら、母音、子音のいずれも5段であることを示し、最も一貫性が高い。母音=/i, e/で子音=/r/ではいずれからも判断できず一貫性が最も低い。そのため辞書の参照が必要となる。母音≠/i, e/で子音=/r/ 、母音=/i, e/で子音≠/r/ なら、一貫性は中間となる。一貫性の低い動詞を表記妥当性が低い平仮名呈示した場合は活用潜時が長く、誤答率も高いことが示され、特に活用型の特定に辞書的知識が必要な語は、辞書の参照が困難となることを見出した。 ②文完成課題:初年度実施の失語症者1例を対象とした、自他対応動詞(例、閉まる/閉める)および対応のない動詞を含む文の文完成課題では、自他対応のある非対格自動詞の成績が低いことを見出し、平成28年度の国際学会で発表する。課題内容に検討を加え、他の症例にも課題を実施している。 ③絵・単語干渉課題:失語症では呼称障害が頻発するが、呼称における音声生成過程の解明のため、若年健常者20人を対象に、干渉語を音声呈示し、絵の命名を行う実験を初年度に行い、品詞・意味・連想効果の出現が明らかになった。しかし心像性は一般に名詞で最も高く、動詞、形容詞などで低い傾向がある。そこで心像性をマッチさせると品詞効果は消えることを見出し、現在、日本語の論文にまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は計画に沿って健常者を対象とした動詞活用実験を行ったが、被験者の確保が思いの外困難であったうえ、実験の性質上、1人の被験者に少なくとも1週間の期間を空けて2回協力してもらわなければならないという想定外の時間的制約のため遅れた。文完成課題の結果については平成27年度に国際学会での発表を計画していたが、学会の開催が隔年のため、平成28年度に発表することになった。英文誌への投稿の準備も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に若年健常者を対象に行った動詞の活用実験を継続し、被験者数の追加および再分析を行う。文完成課題、絵・単語干渉課題の結果を論文としてまとめる。文完成課題については症例数を増やし、引き続き検討する。
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Causes of Carryover |
上述のように動詞活用実験の被験者確保および実施に時間を要したため、実験の希望を縮小せざるを得ず、被験者への謝金使用金額などは予定より少なかった。また、平成27年度に計画していた国際学会での発表は次年度に延期されたため、旅費の使用金額も少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も実験を継続し、被験者、データ処理協力者への謝金に使用する予定である。また、国際学会にかかる旅費、および今後の実験計画の指針を得るために海外から研究者を招き議論する予定である。
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Research Products
(3 results)