2015 Fiscal Year Research-status Report
室町後期の古記録・古文書に於ける記録語・記録語法の研究
Project/Area Number |
26370542
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
堀畑 正臣 熊本大学, 教育学部, 教授 (30199559)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 古記録 / 室町後期 / 兼見卿記 / 記録語 / 記録語法 / 異名 / 唐名 / 古文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
『兼見卿記』の記録語として「扱(アツカイ=仲裁・調停)、仕合(シアワセ=なりゆき・機会)、併(シカシナガラ=全て)、生害(シャウガイ=殺すこと:殺害も見える)、入魂(ジュコン=強く依頼、懇意)、首尾(シュビ=都合良く結了)、斟酌(シンシャク=遠慮)、青女(セイジョ=自分の妻女)、退転(タイテン=中止・荒廃)、出張(デバリ=戦いの為他所に出向く)、諷諌(フウカン=教示)、杵楯(ムジュン=武器をとって戦う)、迷惑(メイワク=まどう)、和談(ワダン=和睦)等がある。 異名として「大樹(将軍)、五明(扇)、青門(瓜)、杉原(紙)、青銅(銭)、用脚(銭)、兎毫(筆)、八木(米)、遠行・遠向(死去)、御事(死去)」等が見える。「摂州」のような国名は多い。唐名として「亞相(大納言)、右京兆(右京職)、右府(右大臣)、黄門(中納言)、中書(中務)」等があるが多くはない。唐代口語は「向後」がある。病語彙に「脚気、咳嗽、験気、所労、病気、不合期、不例、煩」等がある。 漢語副詞として「委細、一往、一段、結句、早速、随分、惣別、大惣、多分、万端」や畳語の「散々、種々、切々、早々、連々」等が見える。 記録語法として「及深更」等の「及~」が平安時代以来使用されている。「有御~ (ゴ~アリ)」はあるが少ない。変化したのは、①平安古記録では行頭の「而」は逆接、文中の「而」は順接になるが、行頭の「而」も順接として使われている。②「以+人+令+動詞」がなくて「以+人+動詞」になっている。「以+人+被+動詞」は少ないが用例がある。これと付随して③使役の「令」が少なく、一人称側や三人称でも被支配者待遇として身分の低いものに使用されている。そのため「令」は使役助字の用法では少ない。また、中古・中世には多かった「副詞+以」が少ない。 古文書は『伊達家文書」と『大友史料』の調査を継続中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は、熊本大学教育学研究科が平成29年度に教職大学院を設置するために、設置審の書類作成を平成28年3月までに提出する必要があり、教職大学院WGの責任者となり、書類作成と文部科学省からの指摘に対応して書類の修正や整備・点検に追われたため、本研究の課題に多くの時間が取れなかった。それが主たる原因である。
|
Strategy for Future Research Activity |
教職大学院の書類の提出は28年3月でおわり、責任者としての立場も交代したので、平成28年度以降からは、充分に研究課題に向けて時間が取れるので、課題の研究を進展していけるし、その心づもりである。また、平成27年度の調査により、調査の観点が把握できたのでそれに焦点を当てていけば研究の進捗が図れる見込みである。
|
Research Products
(4 results)