2016 Fiscal Year Research-status Report
室町後期の古記録・古文書に於ける記録語・記録語法の研究
Project/Area Number |
26370542
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
堀畑 正臣 熊本大学, 教育学部, 教授 (30199559)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 上井覚兼日記 / 古記録 / 記録語 / 記録語法 / 室町後期 / 被給(タマハル) / 被賜(タマハル) / 漢語副詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は『上井覚兼日記』の調査を行った。珍しい記録語として「口篇+愛」(アツカイ)、「早晩」(イツモ)、「家景」(カケイ)、「稠」(キビシク)、「繰替」(クリカヘ)、「誘」(コシラヘ)、「如(鹿児島)」(鹿児島ノゴトク)、「柴」(シバ)、「行」(テダテ)、「閉目」(トジメ)、「魚篇+各」(ハタラク)、「法第」(ホウダイ)等が見える。読み未詳の「明合」「手裏」もある。その他「涯分」(ガイブン)、「挌護」(カクゴ)、「現形」(ゲンギョウ)、「人篇+當」(サテハ)、「生害」(シャウガイ)、「笑止」(ショウシ)、「与風」(フト)、「丸ひ」(マロヒ)等がある。 異名には「五明(扇)」や人の呼称の「勢州」「濃州」「若州」「野州」がある。「金吾」もあるが唐名の意識はなく、異名・唐名の使用は少ない。唐代口語も「向後」が見える位である。病気語彙には「虫・虫氣・かさわつらい・不例氣」がある。 漢文語法としては「雖(イヘドモ)」「況や~哉」「縦~とも」「将亦(ハタマタ)」等がある。記録語法には「以~被~(モッテ~ラル)」がある(従入来院以使僧被申候)。 敬語は「御~有~」(御談合可有由)や「御~候」(御參會候)、「召~」「罷~」「~申」が多数見える。「被下(クダサル)」は「物を下さる」の意で、「被成(ナサル)」は補助動詞用法が目に付く(御光臨被成)。「被給(タマハル)・被賜(タマハル)」には主語尊敬用法(クダサル)と受手尊敬用法(イタダク)の両方が見える。 漢語副詞に「一圓・一向・一段・一定・奇特・結句」が、和語副詞の漢字表記に「一途・急度・卒度・兎角」が見える。形式名詞は名詞句を作る「趣・儀・事・段・躰・通・侭・砌・由」と、接続助詞で節を作る「間・条・処・程」がある。平仮名で助動詞「させ・ましき・らん」等や助詞「かし・こそ・さえ・へ・より」等が記される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基礎調査としてある分量を調査して、その中から問題点や傾向を見いだし、そこから焦点を絞って調査を続行する形をとっている。問題点や傾向に関してはある程度の調査ができたが、もう少し基礎調査を加え、問題点の用例の積み重ねを増やしたい。見いだした問題点の分析を行い、問題点の意義を明らかにして、報告したり、論考にまとめて発表する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
『上井覚兼日記』で調査した語の中から問題点のある記録語や記録語法を洗い出して、東京大学史料編纂所の古記録データーベースや古文書データーベースと比較して、他の古記録文献や古文書文献によって用例を加味していく。問題点を含むものを重点的に調査していくことで調査の時間短縮を図り、研究の推進を行う。 今のところ、いくつかの語や用法は『上井覚兼日記』や九州の相良・大友・島津の古文書類にみられるものが多いことを突き止めているので、それらを重点的に推進するのが効果的であると考えている。
|
Research Products
(3 results)