2014 Fiscal Year Research-status Report
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26370558
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小野 尚之 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (50214185)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 語彙意味論 / 事象 / 動作主 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生成語彙意味論の枠組みを用いて英語と日本語の名詞の事象構造を分析し、種々の構文における名詞のふるまいについて、意味の共合成やタイプ強制という観点から説明することを目的とする。名詞は一般に個体名詞と事象名詞に分けられるが、本研究では、個体を表す名詞も事象を含意することに着目し、その事象性の含意が項の選択や修飾関係、さらには軽動詞構文や複雑述語の形成において意味の合成プロセスに関わることを、日英語の比較分析によって明らかにする。 今年度は、特に動作主名詞の事象性について一定の成果を上げることができた。動作主名詞には、事象への関与を含意するものとそうでないものがあるが、この点に関して、Pustejovsky (1995)は、場面レベルと個体レベルの名詞という分類を導入している。これは次のような例で示される。(『場面レベルの名詞」pedestrian, passenger, customer, smoker, winner:「個体レベルの名詞」violinist, professor, doctor, author, magician) 日本語の方に目を移すと、日本語は場面レベルと個体レベルの動作主名詞を形態的に区別するといわれる(影山1999, 2002)。例えば、前に述べたdriverの多義的な意味は日本語では次のように区別される。( 運転手「個体レベル」Telic = drive (e, x, y: vehicle): 運転者「場面レベル」Agentive = drive (e, x, y: vehicle) 今年度は、日本語の動作主名詞、「ー者」「ー手(しゅ)」「ー手(て)」「ー主(ぬし)」「ー家(か)」などについて、上記の区別による分析を行い研究論文にまとめた。本論文は海外出版社より出版予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題について論文作成を進め完成に至ったが、年度中の出版には間に合わなかった。具体的な成果発表は来年度になるが、計画は概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には、さらに文献・資料の収集を継続するとともに、前年度にまとめた検討課題に、理論的な分析を加えていく。前年度の研究成果は、国内外のジャーナルに投稿する予定である。 平成27年度からは、関連する新たな課題に取り組む。その課題として現段階で計画しているのは、「軽動詞構文と複雑述語」の問題である。「軽動詞構文」については、すでに小野(2014)としてまとめた研究をベースに、さらなるデータ収集を行う。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、研究の進捗状況によって一部成果を国際学会において発表する予定だったが、科研費課題以外の国際シンポジウムのオーガナイザーになったため、国外の学会で発表する時間が充分得られなかった。そのため、予定していた海外出張旅費を使用しなかった。ただし、国内で開催された国際学会に招待され、研究成果の一部を発表したので、当初の計画に盛り込んだ研究成果の国際発信については目的は達せられたと考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、研究資料の収集および研究成果の国内外における発信を積極的に推進していくため、当初の計画に加えて、海外旅費として計上する予定である。
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Research Products
(2 results)