2014 Fiscal Year Research-status Report
日本語話者による英語発音を対象とした学習者コーパスの作成と記述的研究
Project/Area Number |
26370576
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
牧野 武彦 中央大学, 経済学部, 准教授 (00269482)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 日本人英語学習者 / 音声 / コーパス / 分節音 / イントネーション変異表記体系 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画のうち、「(a)コーパスの中で完成済みの分節音部分を用いた記述的研究」については、ほとんど全てを8月末にスイスのチューリヒで開催された第3回英語学国際学会大会(ISLE3)で "Vowel and consonant patterns of Japanese speakers’ English: A study based on English Read by Japanese Phonetic Corpus." と題して口頭発表した。但し、この会議にはproceedings類がないこともあり、まだ論文のような形にはまとめていない。 次に「(b)韻律的特徴の表記を追加することによるコーパス全体の完成」については、表記の枠組みとして、Post and Delais-Roussarie (2006) が提唱した IVTS (Intonation Variation Transcription System、イントネーション変異表記体系)を用いるという方針を決めて、その概略を12月に開催された外国語発音習得研究会(Kommunikation und Aussprache im L2-Erwerb) で「English Read by Japanese 音声コーパスによる日本語話者の英語発音の記述とその作成上の諸問題」として発表した。しかし、その後具体的な記述体系を細部まで煮詰めることはまだできていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「(a)コーパスの中で完成済みの分節音部分を用いた記述的研究」について、詳細な記述を口頭発表したが、まだ論文形式にはしていない。もちろん、この時点で分かっていることを論文化することには意義があるが、韻律的特徴を度外視したままでの記述には限界があることはもとより明らかであるため、これを論文とすることに時間を割くよりも韻律的特徴の表記方式の開発に注力するべきだと判断したためであった。 次に「(b)韻律的特徴の表記を追加することによるコーパス全体の完成」については、本年度中に表記体系の構築を終えることになっていたが、Post and Delais-Roussarie (2006)の「イントネーション変異表記体系(IVTS)」を実際の音声に適用するために細部に改変を加える必要があったが、完成を見ることはできなかった。そのために、当初の予定で行うはずであった、国際音声科学者会議(ICPhS)への投稿(1月締め切り)が実行できなかった。これは、解決するべき問題が多く、それをすべてクリアできるだけの時間が不足してしまったことによる。
|
Strategy for Future Research Activity |
韻律を度外視した未完成な形であっても、日本語話者の英語の分節音の特徴について発表することに意義があるのは明らかである。現在注力している韻律表記体系の開発が完了しても、それを実際のコーパスにつけ加えて表記することには長い時間が掛かるため、表記体系の完成に目処が付いた時点で、昨年発表した分節音の特徴についての報告を論文化し投稿することを目指す。投稿先の候補としては、2015年に創刊された Journal of Second Language Pronunciation などが考えられる。 「(b)韻律的特徴の表記を追加することによるコーパス全体の完成」については、本年度中に表記体系の完成とコーパスのラベリングの完成を両方目指さなければならない。まずは表記体系の完成をできるだけ早く行うことに注力したい。今年度開催の国際会議で、現時点で投稿可能なものへの投稿を目指す。その上で、その体系を用いたコーパスラベリングを行う。 「(c)UME-ERJの欠点を補った文セットによる音声データの収録」については、ひな形となる文セットを既に見つけてあるので、それを日本語話者の実情に合わせて改変する。
|
Causes of Carryover |
国際会議1回あたりの費用が予想より大きく、2回を見込んでいた参加が1回に留まったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度の残額と今年度の予算を合わせて、国際会議への参加を今年度は2~3回とする。
|